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2010-01-15 07:50
鳩山の倫理観欠如は度し難い
杉浦 正章
政治評論家
幹事長時代は「政治家の鑑」、首相の現在は「二度と出てこない政治家」などと、小沢擁護どころか、礼賛・賛美の鳩山発言が続いている。その内容は驚くべき倫理観の欠如を物語っており、国家の指導者としての資質を問われると言わざるを得ない。そして検察のリークや内部告発の証言は、ことごとく「政治家の鑑」という認識が覆されるものばかりだ。鳩山の外交・内政上の音痴ぶりは既に露呈されているが、倫理の面でも“永田町の論理”にどっぷり浸かってしまった発想しか出てこない。これが自らの脱税に限りなく近い政治資金疑惑への認識の欠如に連動していることが分かる。これで国会を乗りきれるとでも思っているのだろうか。
ロッキード事件における榎本美恵子の“蜂の一刺し”発言をほうふつさせる証言が飛び出している。蜂の一刺しは、庭で証拠書類を焼いたというものだが、衆院議員石川知裕の元秘書金沢敬の証言も、証拠隠滅工作のすさまじさを生々と語るものだ。首相鳩山由紀夫は幹事長時代の昨年3月4日に小沢一郎の会見を聞いて、「説明責任を果たされた。小沢代表は、すべての政治資金の収支、入りと出を1円単位まで、非常に緻密にオープンにされているところでして、ある意味ではまさに政治家の鑑のような存在で、ディスクロージャーを旨として行動されている政治家代表です」と述べている。ところが金沢によると、驚くことにその記者会見当日に小沢から「まずいものがあったら隠すように」との指示があったのだ。石川と金沢らは、鹿島関係の書類などを名刺に至るまで段ボールに詰めて隠蔽したというのだ。「政治家の鑑」の慌てぶりが、まざまざと分かる証言であり、鳩山の礼賛は根拠がなくなる。
過去の発言を、3歩で忘れる鳩山は、1年もたてば完全に忘却の彼方だろう。懲りずに1月14日も「小沢幹事長は二度と出てこないような個性を持った政治家だ。民主党の政権獲得に向けて大変大きな力を発揮した。これからも発揮してもらいたい」と誉めあげた。仮にも一国の首相である。テレビは子供もみている。強い倫理観は指導者の欠くべからざる条件と言ってもよいが、範を垂れるどころか、疑惑の主を礼賛する。まさに一蓮托生を目指しているとしか思われない。この神経はどうなっているのか。自らのマザーゲートの膨大な献金を、「驚いた」で済まそうとする神経と酷似している。要するに永田町の論理にどっぷり浸かった思考形態からしか出てこない発想なのだ。さらに鳩山発言からは、自らの管理下にある検察当局の捜査活動に対して、懐疑心を抱いているとしか思えない側面が感じられる。首相がこれでは検察当局はよほどふんどしを締め直してかからないと、指揮権発動という事態にもなりかねない。
過去に吉田内閣の法務大臣犬養健が造船疑獄に際して、当時の自由党幹事長佐藤栄作の逮捕を通常国会の会期終了まで延期せしめた例があるが、鳩山発言を聞いていると、その萌芽すら感じ取れる。失業と不況であえぐ国民を置き去りにするかのように、来週からの通常国会は補正予算や来年度予算を脇に置いて、もっぱらトップ・ツーの疑惑に焦点が絞られて行く方向にある。そしてスムーズな国会運営ができるかどうかは、最大の責任者である首相と与党幹事長の説明責任にスポットが当たる。最終的には政治責任を取るかどうかにかかってくるだろう。一日に数え切れないほど「国民のため」を連発する首相が、カネをめぐる疑惑で審議を混乱・停滞させることになるのである。円滑な国会運営のためにも民主党トップ・ツーは、自らの進退を含めて、本来の国政をめぐる審議促進に貢献すべきではないか。忌まわしいカネをめぐる論争などで、二人そろって政治不信を高める必要はない。
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