米国との間に溝が出来た場合、本来最も重要な日米同盟の信頼関係に大きなヒビ割れの生ずるのを如何にするか、その修復は決して生易しいことではないことは明らかである。鳩山総理は11月13日東京のオバマ米大統領との首脳会談で「自分を信じて貰いたい」(Trust me)と呼びかけたと報じられたが、その後この言葉を裏付ける様な手当が行われているか否か明らかにしない。この関連で想起されるのは、1960年代終わりの日米繊維戦争である。当時沖縄返還交渉の最中であったが、1968年の大統領選挙で南部の繊維業界の票を是が非でも必要としていたニクソン大統領は佐藤栄作総理に繊維交渉の妥結の為に日本の繊維業界の譲歩の為の働きかけを求め、佐藤総理は「善処します」(通訳は「I do my best」と訳したと伝えられている)と応じた。然るに、佐藤総理は国内的に特段の措置を講ずることが出来ず、ニクソンの失望をかってしまった。日本側が蒙った1971年の所謂ニクソン・ショックの一つの理由は、佐藤総理の発言に対する不信であったといわれる。