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2009-11-25 07:34
在宅起訴では検察の甘さが問われる
杉浦正章
政治評論家
いくら何でも総額2億円超とも3億円超ともいわれる虚偽記載を在宅起訴では甘くはないか。これでは虚偽献金がまず首相・鳩山由紀夫を直撃しないことを宣言しているようなものだ。背後には朝日新聞へのリークを基に、「在宅起訴」を既成事実化して、鳩山への進退などの政治問題化を回避しようとする検察の政治的意図が垣間見える。東京地検の政治的独立・社会正義の探求心を疑いたくなる。朝日のスクープをNHKが朝の6時のニュースから追い、報道各社も「在宅起訴」で統一された。長年にわたる検察の世論操縦の巧みさが背後にあるような気がしてならない。まづ政権寄りの朝日を選んで一挙に流れを作る意図が感じられる。朝日の記事は(1)東京地検は匿名献金の大半を含む総額2億円超を偽装と認定し、政治資金収支報告書の作成担当だった元公設第1秘書を政治資金規正法違反(虚偽記載)容疑で立件、在宅起訴を視野に検討する、(2)首相本人については、虚偽記載への直接の関与を示す証拠はこれまでのところ浮上していない、というものだ。このリークから見えてくるものは多い。まず検察が“首相直撃”を避けていることだ。
在宅起訴とは逃亡の恐れがなく身柄を確保するほどの必要性がないと検察が判断したものであり、もともと軽微な犯罪に適用される。この結果、おそらく「故人献金」などの問題は秘書の独断専行に限定され、捜査の核心が首相にまで波及しないことを暗に物語っている。首相の弁護団は全力を挙げて首相への波及を食い止めるための暗闘を続けてきたのであり、おそらく思うつぼにはまったとほくそ笑んでいることだろう。そうだとするならば、検察は極めて政治的であると疑わざるを得ない。鳩山政権が世論のうけもよく、ここで政権をつぶしては日本の民主主義が危機に陥ると判断したのかも知れない。しかし、その判断はあくまで政治の分野に属するものであり、1捜査機関の判断の域を超えている。
このリークを政権側が喜ばないわけがない。副総理・国家戦略相・菅直人は、同日の記者会見で「批判があるのは当然だが、政権そのものが揺るがされるようなことにはならないのではないか」との重大な見通しを述べている。在宅起訴では政治家ならピンと来るものがあるのだろう。むしろ政権側の高笑いが聞こえるようだ。それはそうだろう在宅起訴では、暗に捜査は秘書に限定され、首相に波及しないとの意思表示でもある。また公判の過程でも秘書の起訴事実以外はほとんど審理の対象とならない可能性がある。法定献金限度額1000万円を超える額は、「貸し付けであった」とする首相の主張を地検はそのまま認めていることにもなる。実に甘い対応だ。母親からも5年間で9億円の“貸し付け”があったというが、これもそのまま是認するのだろうか。
しかし、政治的には全く別の話だ。在宅起訴でも、起訴は起訴だ。「秘書の罪は、国会議員の罪」としてきた鳩山へのブーメラン効果は大きなものがあろう。支持率は続落してボディー・ブローとして利いてくる。おりから鳩山は11月24日幹事長・小沢一郎と余人を交えて2時間会談しているが、この時点だ、おそらく二人だけの蜜談があったのではないか。乗り切りの戦略が練られている可能性が大きい。小沢の第1秘書のケースと同じで、裁判の過程に移行すれば、鳩山は「裁判を見守りたい」で当分しのげると判断しているのだろう。「検察を見守る」から「裁判を見守る」に表現を変えるだけだ。これに対して自民党の反応は相変わらず鈍い。本来なら党声明を発してでも、首相を断罪してゆくのが筋だが、“ずっこけ”総裁・谷垣禎一では勝負になるまい。
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