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2009-11-10 07:36
「こんなはずではなかった」鳩山政治
杉浦正章
政治評論家
「こんなはずではなかった」と、後悔してももう遅い。小沢一郎と日教組の高笑いが聞こえる。鳩山政権が発足して2か月になろうとしているが、政権の実像が浮かび上がってきた。有権者にとって最も予想外で、おそらく多くの国民が鳥肌が立つのは、「学校教育の日教組支配」への流れだろう。民主党の本質を理解せず、「反自民感情」をすべて民主党票に託した結果だ。加えて「脱米入亜」「故人献金開き直り」「臆面もなき天下りの実施」「ささやかれる鳩山大不況」と、“想定外”は枚挙にいとまがない。政権発足以来の内閣支持率は10ポイント程度の大幅下落を見せており、11月10日付けの読売新聞の調査でも8ポイントもの下落となった。今後国民の政治への不信・不満は内向して、閉塞感は自民党政権以上に増幅するだろう。
日教組の政治介入などは、とっくに分かっていたことだ。今年1月日教組新春の集いで、鳩山由紀夫は「日教組とともに、この国を担う覚悟だ」と言い切っている。同席した日教組のドンで、民主党幹事長代行の輿石東も、「政治から教育を変えていく。私も日教組とともに戦う」と、政権が日教組路線全面支持であることを誓った。 鳩山内閣は既に日教組の方針を反映して、「学力テストの縮小」「教員免許更新制の廃止」といった新政策を打ち出し始めており、今後エスカレートすることは必至だろう。学校教育は日教組によるハイジャックの危機に瀕している。自民党が「日教組が全国学力テストに反対している理由は、日教組活動がさかんな地域ほど学力が低いという統計があるからだ」と批判しても、まさに引かれ者の小唄のようで影響力はない。後の祭りとはこのことだ。
驚いたのは首相の「故人献金」での開き直りだ。「選挙の洗礼を経たから責任は取る必要がない」というような見解だ。参院予算委で「責任をどう取るか」と聞かれて、「どのように責任を果たすか考えているが、政権交代に向けて頑張れ、と民主党に大きな支援をもらったことも事実で、その民意を果たすのも責任だ」と開き直ったのだ。「秘書の責任は、政治家の責任」と繰り返してきた自らの発言と全く相反する見解だ。鳩山発言には大きな論点のすり替えがある。あらゆる世論調査が選挙前も後も、その70%が「首相は説明責任を果たしていない」と指摘しており、読売の今朝の調査も73%に達した。鳩山の言うように、有権者が選挙結果で虚偽献金を是認したと言うのは、論理の飛躍だ。この問題も有権者は「こんなはずではなかった」だろう。郵政社長人事や人事院人事官人事で適材適所を言い張っているが、だれがどうみてもサギをカラスと言いくるめるたぐいだ。まさに民主党が批判を繰り返してきた「天下り」と「渡り」そのものの人事であり、ここまでやるとは「想定外」の極みと言ってよい。
経済財政政策でも構造的な欠陥が生じ始めている。長期金利がじわりと上昇の動きを見せているのだ。11月9日の東京債券市場でも前週比0.0025%幅高い1.475%となった。鳩山政権の赤字国債大幅発行を嫌気しているのだ。前政権の当初予算での国債発行額でなく、「補正も含めた総額44兆円を上回らない額の発行」という欺瞞(ぎまん)を市場が見抜いて、長期金利の上昇に弾みをつけているのだ。国債の大幅増発による需給悪化懸念で、市場には不安感が先行しており、債権売りに歯止めがかからないのだ。補正予算も“みせしめ”に3兆円を削ったはよいが、使い道が決まらず、結果として景気の足を引っ張るだけだ。「鳩山大不況」の可能性を有権者は予測しただろうか。“子供手当で内需拡大・景気回復”の公約などとっくにどこかにすっ飛んでしまっている。読売の調査ではなんと85%がマニフェストの実現を一部見送っても「国債は増やすな」である。
誰が「日米関係の悪化」を期待して投票行動に出たかであるが、潮流は紛れもなく「脱米入亜」だ。オバマ来日では日米同盟を高らかに歌うだろうが、それはうわべだけのこと。米国は後ろ足で泥をかけられて喜ぶほどのお人好しではあるまい。ただでさえ著しく米中接近が進んでいる中で、日本は本格的に「蚊帳の外」となる日も近いのではないか。読売によると、米高官は広島・長崎がオバマを名誉市民とすることを希望しているという。例えオバマの広島・長崎訪問が実現しても、オバマの評価は高まるが、日米関係は別次元であろう。このような民主党政権の実態像が鮮明になるにつれて、国民の幻滅感は増大するだろう。しかし、政権はその座に4年間はしがみつこうとするだろう。したがって、国民の閉塞感は強まるが、はけ口がない状態が続く。不満の油が床に満ちれば、ちょっとした失政や汚職が政権を直撃する可能性は否定できないが、まだ予測できる段階ではない。
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