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2009-10-30 07:56
自民に“万年野党”化定着の構図
杉浦正章
政治評論家
衆院本会議質問を聞いて「これは駄目だ」と直感した。自民党の政権奪還は、はるか彼方に遠のいた。「再質問すればよいのに、根性がない」と民主党幹事長・小沢一郎が自民党総裁・谷垣禎一の代表質問を形容したことがすべてを物語っている。自民党は敵失が山積しているのに突けないし、突く気力も失せたように見える。次々に支持業界も離反し、執行部はなすすべもない。盟友・公明党も離反し始めており、来年の参院選挙も民主党にじゅうりんされそうな流れだ。民主党に比べて決定的な弱点は、中堅・若手に人材が枯渇し、将来への希望が持てないことだ。このままでは“万年野党”化して、やがては消滅するかも知れない危機に瀕している。代表質問の衆院本会議場における自民党席は哀れをとどめた。民主党席がサッカー・スタジアムだとすると、自民党席はまさに病院待合室のような重苦しい雰囲気に覆われ、首相・鳩山由紀夫から言いたい放題の反論を食らっても、虚ろな冷笑で返すのが精一杯だった。
民主党前代表顧問・渡部恒三が産経新聞の10月30日付紙面のインタビューで「内閣をつぶす力が自民党にはもうまったく感じられない。気の毒だけど谷垣君の代表質問を聞いて、政権奪回の迫力を感じた者はいなかったと思う」と述べている。まさにそのとおりだ。渡部は小沢に徹底的に干されて、最高顧問まで外されてしまったが、まだ政治の“読み”は冴えている。「和」の政治家・谷垣には、とても窮状を打破して起死回生をはかる技量などない。かねてから予想したとおりだ。読売の全国世論調査でも「谷垣に期待している」と答えた人は34%にとどまり、「期待していない」は57%に上った。自民党内各派も派閥の体をなさなくなった。首相候補を抱え、将来に希望を持てるから成り立ってきた各派は、存在意義の喪失で見る影もなく凋落(ちょうらく)した。ただ一人しかいなくなった二階派の二階俊博が、伊吹派に合流しようが、いたたまれなくなって中川秀直が町村派を離脱しようが、すべて大勢に影響はない。今後存在意義のなくなった派閥は液状化現象を続けるだろう。これが党自体の液状化へと発展すれば、まさに解体、再編の危機だ。
支持母体も、日本歯科医師会の離反に続いて、日本医師連盟、農協(JA)といった古くからの支持母体が自民党支持を見直し、外部からの崩壊も始まった。読売が「自民『二番底』の不安」と見事な見出しで形容している。谷垣側近が「衆院選が底なのではなく、二番底もあり得る」と述べているというのだ。もちろん参院選挙大敗だ。すでにその兆候は、公明党の協力を得られなかった参院神奈川・静岡両補選で敗退していることからもうかがえる。唯一残された短期決戦戦略は、参院でねじれ現象を起こし、政権攻撃の橋頭堡とすることだが、執行部にはその気力も、覇気もない。このままでは公明党も参院で自民党と協力しない可能性がある。既に自民党の給油法案への同調を拒否している。「二番底」どころか「底割れ・分裂」の危機すら出てこよう。
渡部恒三が「自民党には次のリーダーもいない。末期的症状だ。民主党には人材が山のようにいる」と述べているように、今後の民主党戦略の強みは、当分首相の差し替えが利くことだ。鳩山が失政や不祥事で退陣した場合でも、小沢は菅直人か岡田克也に差し替えればよい。場合によっては、自分で手を挙げるかも知れない。英国労働党政権が1997年の選挙で大勝するまで18年間。米国の民主党が8年。そのロングレンジで自民党は腹を決めて、ひたすら「野党力」を磨くしかあるまい。そのうちに鳩山が高転びに転んだり、大失政をするなど、たまには嬉しいことがあるかも知れない。この自民党の体たらくでは巨大政党を背景にした政権をチェックできず、日本の民主主義はマスコミのチェックにかかるところが大きくなった。マスコミが「民主党ええじゃないか」を繰り返していると、大きな陥落が待ち構えている予感がする。厳しい批判の眼で政権を見据えて、是々非々のチェックを入れてゆかなければなるまい。
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