ホーム
新規
投稿
検索
検索
お問合わせ
2009-09-20 22:38
破綻国家とテロリストの癒着にどう対処するか
茂田 宏
元在イスラエル大使
9月15日付ワシントン・ポスト紙は「米、ソマリアでの急襲でアルカイダと関係のあるテロリストを殺害」との見出しで、「米高官は、ヘリコプター搭乗特殊部隊が9月14日ソマリア南部でアルカイダと関係のある重要容疑者を攻撃、殺害したと述べた。これによると、2002年ケニヤにあるイスラエル所有リゾート・ホテルの爆破と同じ年のイスラエル航空機撃墜未遂事件に責任があるサレー・アリ・ナブハンが、この攻撃で死亡した由。ナブハンは1998年のアルカイダによるケニヤとタンザニアの米大使館攻撃にも関与した、とテロ専門家はみている。攻撃は米海軍艦艇からのすくなくとも4機のヘリで行われた。ヘリ1機が攻撃の後着陸し、ナブハンの遺体を含む4名の遺体を収容した、と軍関係者は述べた」と報じている。
ナブハンは、ソマリアに何年もいたと考えられている。ソマリアでイスラム法廷連合が政権を取っていたころから居り、2006年後半、米が支援したエチオピア軍のソマリア侵攻の際、モガデシュにエチオピア軍が侵攻する前にソマリア南部に脱出し、ソマリアのイスラム過激派組織シャバーブと行動をともにしてきた。今回の攻撃もシャバーブ支配地域で行われた。エチオピア軍の侵攻、撤退後、ソマリア暫定政府ができ、国際社会はこれを承認したが、首都以外に統治を及ぼしておらず、シャバーブの勢力が強くなっているし、その後アルカイダとの関係も深まっている。9月15日付ニューヨーク・タイムズ紙も「米、ソマリア南部でアルカイダ指導者のトップを殺害」とほぼおなじ内容を報じている。
ナブハンは、東アフリカのイスラム過激派とアルカイダの連絡役を務めていた重要人物である。その殺害は、アルカイダにとり打撃である。ブッシュ政権は、ソマリア南部で無人航空機やトマホーク・ミサイルによりテロリストを標的として攻撃してきたが、今回の作戦はヘリで人員を派遣して行われたものである。現地の民間人の被害者を出さないためには、このほうがよいし、成功したが、米軍人の危険は増えるやり方である。ソマリアは、アデン湾その他の海域での海賊が根拠地にしているが、テロリストも根拠地にしている。アフガンが問題であるということで、米国はアフガンに大きな力を注いでいるが、ソマリアにも同じような問題がある。
ほかにも破綻国家はある。これらの国をすべてきちんとした国にすることは米国一国の力に余るし、同盟国と協力してもできないだろう。テロとの戦いは、国造りではなく、水際対策などの国土防衛と無人飛行機や海上からの攻撃などの活用で対処するのが、費用対効果上適切なのではないかと考えられる。なおオバマ大統領は「無人航空機や海軍艦艇からの攻撃で、アフガンでのテロ対策を行うことはどうか」とインタビューで聞かれ、「それでは足りない、何故若い米国人が6万人以上もアフガンに行っていると思っているのか」と答えている。ただ、テロリストの撲滅などは無理な話で、ある程度の危険は覚悟せざるを得ない。どこまでのコストを払い、どこまでの危険を許容するか、の問題である。
>>>この投稿にコメントする
修正する
投稿履歴
一覧へ戻る
総論稿数:4819本
グローバル・フォーラム