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2009-09-13 16:24
DE-REGULATIONの時代からRE-REGULATIONの時代に
岩國 哲人
前 衆議院議員
市場の自由化、グローバリゼーションという政策は、結局のところ、資本という大型車の無免許運転や暴走を容認して、豊かな未来を約束したはずの資本主義の基盤そのものを破壊しようとしている。「金」(カネ)が最大の収益を生みだせるように、県境を越え、国境を越えて動きやすいようにと、まさに小泉・竹中改革の資本主義の最大の奉仕者としての例を挙げれば、労働法を改正し、労働市場の規制緩和を実現したことである。経営団体からは歓呼の声で迎えられ、大量の二―ト、フリーターを生み出した。それがどれほど深刻な所得格差や社会不安を引き起こし、若い世代の犯罪を増加させたことか。今頃になって気がついて、「小泉さんいずこ」、「竹中さんどこぞ」と探してももう遅い。
「医・職・住」の安定こそ最大の福祉、最高の社会安定剤、治安特効薬であることを、今こそ国民がしっかり認識すべきである。なんとかの一つ覚えで、規制緩和さえすれば経済の活性化と消費者の利益に繋がるという竹中流の机上の空論と、2周遅れの政策が、ともに見事な失敗に終わったのが、タクシー業界の規制緩和である。「緩和」どころか、今や新聞の見出しは「規制強化」。タクシー会社は経営難、運転手は収入源、そして利用者には運賃値上げと、絵に描いたような「一石三懲」。典型的には株式市場だが、市場を支配するものは、欲望と恐怖であり、大きな欲望集団の出現は、恐怖をも増加させる。資本主義の利益追求重視の経営姿勢はグローバリゼーションの進展とともに益々加速し、効率化、高利益化を急ぐあまりに、人間を資本財(Human Capital)のようにみなす危険がある。「人間は機械ではない。人間は人間である」という当然の常識を取り戻し、人間性尊重(Human Value)の社会に変えるためにも教育を重視すべきだと思う。
「金」、「環」、「食」それぞれの問題に共通するのは、「人間資本」(Human Capital)から「人間価値」(Human Value)への価値体系の転換、言い換えれば、世界のリーダーがリーダーらしい勇気ある「人間革命」への一歩を踏み出すことである。私は長い間、GLOBALIZATIONについては推進する立場にいたが、考えが変わった。GLOBALIZATIONはたしかに資源や時間や労働力をマーケットの動きに合せてそのベストの配分を決めさせ、すべての人に自由なビジネスのチャンスを与えるという非常に誘惑に満ちた考え方である。しかし、国境を越え、どんな思想や宗教や政府からも自由な資本や企業が、人間さえも「HUMAN CAPITAL」と位置づけて行動し、巨大化してゆくその力に、国家も国民も翻弄されるという世界は、決して「HUMAN VALUE」を尊重し、人間の幸福を最大目標とするシステムとはなりえない。GLOBALIZATIONという思想は、「利益を求め、責任から逃げる」という行動理念を持っているからである。
動物、植物、人間の住む地球の資源を使い、それぞれの国の労働力と販売力を使うGLOBAL資本には、当然のことながらRE-REGULATIONも必要である。世界の先進国の傾向としては、DE-REGULATIONの時代から、今やRE-REGULATIONの時代に入っている。タクシー業界も DE-REGULATIONを要求して、結局値下げ競争や拡大競争で会社の利益も運転手一人当たりの収入も下がり、「DE-REGULATIONの目的は、消費者と利用者へのサービス向上です」と政府と業界が説明してきたことが全く逆になった。今こそ、GLOBALIZATIONとDE-REGULATIONという2つの嵐から、地球環境と健全な社会と人間を守るために、必要なRE-REGULATIONをためらわず早急に導入する知性と勇気を、政府と議会が示すときだと思う。
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