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2009-08-28 07:40
麻生、事実上の敗北宣言
杉浦正章
政治評論家
「きわめて責任は重たい」と自民党総裁・麻生太郎が総選挙大敗北の責任を認め、事実上の敗北宣言をした。恐らく選挙後に責任を取って党総裁を辞任する腹を固めたのだろう。しかし、この選挙の責任が「麻生選挙の敗北」なのか、「自民党積年の病弊」なのかというと、後者を原因と見るのが正しいだろう。むしろ「積年の病弊」の中のワン・オブ・ゼムに、「麻生選挙」が含まれると言うことだろう。だからといって、巡り合わせの総裁としての責任が、これほどの大敗を前に問われないと言うこともあり得ない。麻生は「自公連立政権に対するいろいろな批判が堆積(たいせき)している」「これまでの負の遺産を引き継いでこの立場にある」とも述べている。
それはそうだ。麻生が解散総選挙をすぐやるつもりで政権を引き継いだのに、なぜ解散を任期満了まで引き延ばしたのか、が全てを物語る。無責任な政治評論で「1年の間に解散のチャンスがいくつもあったのに」というが、筆者は「冗談じゃない。全くなかった」と断言できる。総裁になったとたんに麻生が目にしたのは、自民党の選挙情勢調査だ。それも現在の数字とほぼ同じで、自民党が130議席程度に激減するというものだった。慌てて急ブレーキをかけて、態勢立て直しを図ろうとしたのが「解散先送り」だ。しかし「過去の負の遺産」が余りにも大きすぎて、「構造的敗北」が当時から確定してしまっていたのである。
それは、消えた年金、消した年金の露呈であり、後期高齢者医療制度という大失政、安倍晋三、福田康夫の無責任な連続政権投げ出しである。米国発の大不況が大地震の津波となって列島を襲ったことも、政局にはマイナスに働いた。なによりも小泉政権による行き過ぎた市場原理主義が、国民の間に紛れもない格差と不満を生じさせたことも原因だ。麻生の「ぶれ」とか「誤読」などは、マスコミと野党による自民党政権批判のための「手段」であったに過ぎない。現に竹下登や宇野宗佑のように選挙応援を拒否されて動けぬ、動けなかった首相も多いが、麻生は連日応援をこなしている。周辺から再出馬の動きが出る可能性があるが、憲政の常道から言っても、政治的にはきわめて困難だろう。
選挙後の党内情勢がどうなるかだが、「麻生降ろし」に奔走した武部勤が落選必至、中川秀直も苦戦だ。逆に麻生を支持した派閥の領袖も落選必至のケースが目立つ。党内は要するにガラガラポンの状態になるだろう。党分裂の目もないわけではないだろう。しかし、仮に100人前後にとどまった場合、結束できれば、やがて風が自民党に吹くことだってあり得る。まだ地方組織は崩れていないのが強みだ。新総裁の下に巧みに民主党の弱点を突き、地道に地方組織を固めれば、捲土重来も無理ではない。民主党は鳩山の虚偽献金に始まって弱点だらけであり、攻撃材料には事欠かない。後継総裁候補としては、舛添要一、石原伸晃、加藤紘一、谷垣禎一、石破茂らの名前が挙がっている。中川が競り勝って、当選すれば、候補になるかも知れない。まだとても誰がリードなどと言える状況でもない。いずれにしても自民党が大敗北の虚脱状態から抜け出るのは容易ではあるまい。
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