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2009-07-23 07:46
表面化する民主党外交・内政路線の「ぶれ」
杉浦正章
政治評論家
政権選択の政治決戦に突入して、民主党の外交・内政が大きな「ぶれ」を見せ始めている。憲法違反としてきたインド洋での給油活動を容認、財源論ではついに配偶者控除の廃止という増税に転換し始めた。外交、内政ともに現実路線を選択せざるを得ない状況となったのだ。党内旧社会党系の不満はうっ積するだろうし、連立を目指す社民党首脳からは「看過できない」との発言まで飛び出している。政権に就く前から寄り合い所帯の分裂傾向が生じており、「鳩山首相」で操縦可能かという問題に逢着しそうな雲行きだ。そもそも小沢一郎が代表時代に「給油は憲法違反であり、反対」として給油法案にも反対してきたのは、党内左派と社民党への配慮があったからだ。しかし、最近の幹部発言は給油を継続する方向だ。それも「1月まで期限があるから」(幹事長・岡田克也)と反対してきた法案の期限を理由にするという矛盾まで露呈している。
あきらかに1月以降もなし崩しで給油は継続するという流れだろうが、党内、連立先がそれで治まるのか。この現実路線志向傾向は、さらに代表・鳩山由紀夫の発言で確定的になる。日米核密約に関連する非核3原則について「拡大核抑止力をどう考えていくか、という議論はあってしかるべきだ」と発言したのだ。要するに、3原則のうちの「持ち込ませず」の見直しだ。政府・与党もちゅうちょする部分に踏み込んだのである。もともと鳩山は改憲論者であり、その思想に沿った発言であろう。しかし、これには社民党党首・福島瑞穂が「発言は全く看過できない。許せない」と拒絶反応を見せている。政権を取ればかならず行き着く路線上の矛盾点が、早くもほころびを見せ始めたことになる。読売新聞は7月23日付社説で「鳩山代表が信条とする『健全なリアリズム』の発露だろうが、社民党から強く批判されている。これで腰砕けになるようなら、次期首相の資格はない」とまで言い切っている。同紙によると「民主党は海賊対策では海上自衛隊派遣を容認する」という。これでは国会審議は何だったのか、ということになる。とりわけ給油では、長期に渡わたり国会審議が空転し、膨大な血税を使った。まさに反対のための反対だったということになる。
普天間基地移転の日米合意見直し路線だけは“堅持”しているが、政権を取って以降どうなるのか。米側は、既に圧力をかけてきており、恐らく揺らぐだろう。内政での問題は、財源論である。これまで無駄遣いの根絶で歳出を9・1兆円削減、埋蔵金活用などによって歳入を11・4兆円増やし、合計で20・5兆円を捻出するとしてきたが、総じて信用されていない。朝日は7月23日付社説で、「どこをどう節約するのか。それでも足りない分は国債に頼るのか。そこがあいまいでは、有権者は納得できまい」と主張している。苦し紛れか、目玉の1人あたり月額2万6000円の「子供手当」に関連して、子供のいない家庭の配偶者控除は廃止すると言い出した党幹部もいる。初めて増税への言及である。鳩山は消費税は4年間上げないと断言し、マニフェストにも盛り込む方針だが、本当に公約が守れるのか。
霞が関改革も、当初鳩山は「局長には皆辞表を出してもらう」と述べていたが、最近は「辞表という形にはならないが、民主党に協力していただける方には前面で頑張っていただくし、そうでない方には何らかの人事を考える必要が出てくる」とトーンダウンさせている。英国を真似て幹事長を閣僚にすると述べていた代表代行・菅直人も、「英国とは国会運営の仕組みが違う。連立政権時に、与党間折衝をする幹事長らが閣内にいると、制約が大きい」と述べ、見直す意向に転換。このように外交・内政上の「ぶれ」が顕著になってきているが、これを“夢”ばらまき路線の挫折で信用できないと受け取るか、現実路線への転換であると歓迎するかは、有権者の判断次第だ。朝日の社説は「『公約』を辞書で引くと『守られないもののたとえ』とある。そんな笑い話をどこかで聞いた人も多かろう」と述べているが、笑い話で済ませられることではあるまい。無節操の極みと言わなければなるまい。
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