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2009-07-14 07:43
財務相・与謝野に“署名拒否”の誘惑
杉浦正章
政治評論家
いまだにNHKは「麻生おろし」を大きく報道しているが、かねてよりの指摘通り「麻生おろし」は事実上失速した。今日7月14日午後の内閣不信任案の否決で確定する。各議員とも今後は尻に火がついて選挙区に帰る。のんびりと永田町で“暗躍”した結果落選、というわけにもいかなくなったのだ。問題は財務相・与謝野馨にとって解散詔書の署名拒否が、起死回生の選挙運動になることだ。明らかにその誘惑にかられており、場合によっては2、3人の同調者が出るかも知れない。これはたんたんと罷免して対処することになるだろう。
新聞や民放テレビなどは「14日解散」の報道が当たらなかったことをまた首相・麻生太郎の「ぶれ」のせいにしているが、1週間程度のずれは「ぶれ」の内に入らない。「解散宣言」で麻生は反主流を押さえ込み、「自らの手による解散」を断行できることになったのであり、政局原稿は大局を見なければならない。ポイントは、13日夜の各派事務総長会議だった。ここで“造反”の動きが出れば、解散戦略に問題が生ずるところだったが、結局14日の内閣不信任案の否決確認で結束した。各派とも本会議に先立って総会を開き、落ちこぼれのないよう締め付けることになった。もともと元幹事長の武部勤や中川秀直の動きには根本的な欠陥があった。一つは、人材枯渇でこれはという総裁候補がほかに全く見あたらないことだ。御輿がなくては“祭”は始まらない。
他の一つは、世論が同調しなかったことだ。“表紙”を代えて出直すワンパターンに国民は飽き飽きしていることを、両元幹事長は分からなかったということだろう。反麻生グループは両院議員総会へ向けた署名活動を開始したが、執行部はやすやすと開催などしまい。時間切れとなる可能性が大きい。だいいち、不信任案を否決しておきながら、麻生おろしでは行動矛盾となる。今後は元官房長官・塩崎恭久ら中堅・若手の「マニフェスト連合会議」が目指す“政策分裂選挙”が実現するかどうかだ。天下り禁止など民主党マニフェストの真似をして、独自のマニフェストを作ろうというわけだが、政策での“分裂”ではすごみがない。分裂選挙なら小泉のように反対候補に刺客を送り込むくらいでないと耳目は集まらない。いずれにしても、反麻生の動きは大きなうねりとなることはない。完全に手詰まりとなった。
散発的なゲリラ的行動はいくつか予想される。鳩山邦夫の新党の動きや忘れかけられている渡辺喜美に同調する動きなどだが、これもたいしたことはない。面白いのは、与謝野がハムレットを演じていることだ。「解散詔書に署名するのか」と聞かれて、「明日からの党内世論の動向を見て」などと答えている。背景には与謝野の選挙区事情がある。都議選の結果、選挙区の千代田区で告示9日前に立候補した26才の新人に都連幹事長が敗れるという事態となった。このままでは民主党候補・海江田万里に負け、落選がほぼ確実視されるに至ったのだ。与謝野としては解散詔書への署名拒否を宣伝して形勢を逆転させたいところだろう。これまで内閣の要として貢献し、麻生との信頼関係も厚かった与謝野にして、麻生を“裏切る”選択を考えざるを得ないとは、厳しい状況になったものだ。しかし署名を拒否しても選挙民への訴求力があるかどうかは疑わしい。与謝野には悪いが“悪あがき”はやめた方が良い。
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