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2009-06-26 07:46
「鳩山よお前もか」のインパクトは大きい
杉浦正章
政治評論家
恐らくこの数日間、民主党代表・鳩山由紀夫は眠れない夜が続いていることだろう。暑いからではない。「正義の味方」、「国民の味方」の白馬の騎士が政治資金虚偽記載で落馬しかかっているのだ。明らかに来月1日の党首討論を断ったのも、これが理由だ。朝日新聞ですら「鳩山ブーム失速懸念」と報じ始めた。逆に麻生は、有頂天の元気さが戻ってきて、「遠くない日」の解散を言い出した。自民党からは証人喚問の要求が生じている。迂回献金で「与謝野馨よ、お前もか」と思っていたが、「鳩山よ、お前もか」の虚偽記載の方が格段に政局へのインパクトがある。
週刊新潮や朝日新聞によると、鳩山事務所の政治資金収支報告書作りはすさまじい。まず既に亡くなった人の「故人献金」、生きている人の「他人献金」、見たこともない人の「赤の他人献金」と、あらゆる手段を講じて献金者リストをねつ造したのだ。なぜ虚偽記載したのかは、一目瞭然だ。記載できない資金源からの政治資金が入ってきていたからだ。その内容について前官房長官・町村信孝は、驚くべき指摘をしている。「相続税の脱税にまで発展しかねない」というのである。鳩山家の相続税と言えば、莫大なものだが、それを脱税していたとすれば、政党の党首としての責任問題に発展する。政府首脳であった町村の情報源は、ただの情報源ではあるまい。鳩山3兄弟の相続額は、音羽御殿、軽井沢の別荘、ブリジストン株など総額で152億円。昨年のブリジストンの株価下落では、鳩山邦夫が「兄弟で40億円ずつ、合計80億円の損した」と豪語したものだ。加えて、記載できない企業献金の可能性もある。小沢一郎、与謝野馨のような迂回献金かもしれないし、鳩山家としては口に出せないようなレベルの業種からの献金かもしれない。
鳩山は例によって「実務担当の秘書の行為とは分かったが、正確を期さなければならず、調査している」と秘書のせいにしているが、これは自ら自民党の政治資金を追及してきた論旨が成り立たない発言だ。鳩山は幹事長時代に自民党議員に「秘書がやった」などとする言い逃れ発言が多い点について、「資金管理団体、政党支部の代表者は、政治家本人。領収書の多重使用などは事務的なミスではない」と批判しているのだ。政治家本人の責任を追及してきた“張本人”が、同じ穴のムジナではすまされまい。鳩山には当然説明責任が生ずる。党首討論を取りやめるような姑息(こそく)な手段に出るべきではあるまい。討論に出て国民の前で堂々と説明すべきだろう。それとも説明できない内容であることが分かっているのか。また検察当局が黙って見過ごせる問題かどうかも問題となろう。麻生としては“逆指揮権”発動も視野に入れてよい問題だ。
元気が戻った麻生は、6月24日には国会で「報道によれば、鳩山代表は故人から献金を受けた事例があるという。個人献金がすべて善ということにならないのではないか」と、企業献金を廃絶して、個人献金を主張してきた鳩山を、強い口調で批判した。25日の記者会見でも「解散は遠くない日」と意気軒高だ。確かに最後の土壇場になって、政府・与党に好材料が飛び込んできた。しかし、この鳩山偽装献金問題を有権者に周知徹底、支持率回復につなげるためには、ある程度の時間が必要となる。“神風”へと発展させるためには、公明党を敵に回してまで都議選前の解散をする段階ではないのではないか。NHKの断定報道に引きずられて、麻生発言の「遠くない日」を「都議選前解散」と解釈した新聞が、朝日と共同通信だが、読売は「都議選後」の判断だ。ここまでくると、動物勘の鋭さが記事に反映されるが、読売の動物勘が正しい。公明を離反させて勝算はない。
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