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2009-06-01 20:03
GM破綻、驕る者久しからず
若林 秀樹
元参議院議員(民主党)
5月31日、米国政府は、クライスラーに続き、ビッグ3の最大手ゼネラル・モーターズ(GM)が連邦破産法11条の適用を申請すると発表した。政府の緊急融資を決定した昨年11月、多くの専門家や連邦議員が今日の破綻を予測していたが、その時点での「破綻宣告」は政治的には難しかった。しかしこれで米国の自動車産業は、再生に向けて新たな段階に入ることになる。1973年8月、米国ミシガン州ディアボーンにあるフォードの自動車工場を見学したことがある。見学の最初の工程は、停泊している鉄鉱石を満載した船であり、そこから製鉄が始まり、徐々に様々なパーツが作られていった。そして最後は、組み立てられた完成車が工場から出てくる、正に完全な自動車の一貫工場であった。
ガイド役のアメリカ人は、これがアメリカ経済を支える自動車産業の強さであり、日本には到底まねできないであろうと、言わんばかりの誇らしげな態度であった。あの工場見学以来、同年に起きたオイルショックを経て、アメリカの自動車産業は衰退への道を転がり続けた。時折、あの得意満面なガイドの顔を思い出しては、あの驕りの態度は基本的に今日まで変わっていなかったと考えるのだった。1980年代の貿易摩擦の時代には、政治的な配慮で日本メーカーが「輸出自主規制」を行い、これが結果としてアメリカ自動車産業の甘えを助長し、日本メーカーの現地生産を加速させた。
1995年の日米自動車協議では「日本での米国車を扱う販売拠点は2000年末までに約1000店に達すると予測する」という合意に達した。日本メーカーは、その実現に向けて相当協力したものの、ビッグ3が自助努力をせず、合意内容は水泡に消え去った。そして、ビッグ3は、その後のアメリカ経済の立ち直りで、一時的には息を吹き返したかに思われたが、昨年の世界的な金融・経済危機が経営危機の引き金を引くことになった。やはり環境問題やエネルギー情勢の変化という大きな流れに対応する努力を怠ったツケが、一時的な救済では手遅れの経営破綻となったのである。
ここから引き出される教訓は、「驕る者久しからず」である。アメリカ経済のシンボルであったビッグ3には、「倒産するはずがない」、「最後は政府が守ってくれる」、「このアメリカで日本車に負けるはずがない」等という甘えはなかったか。「常に進化する努力」を怠れば、企業は衰退し、やがて経営破綻に帰結する。日本もかつてリードしていた半導体や家電等では地歩を失った。日本の自動車産業も安穏としてはいられない。GMの破綻を「他山の石」として、日本の産業も教訓として生かして欲しいものだ。
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