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2009-04-03 00:00
政治家の成熟度が分かる「解散」発言
杉浦正章
政治評論家
官房長官・河村建夫が、野党が抵抗すれば解散もありうるとする首相・麻生太郎発言に関連して、「景気対策の3段ロケットが完成し、解散権を得たという気持ちがあるのではないか」と述べた。補佐役として、ようやくここまでもってこれたという感慨が読み取れる。しかし百家争鳴は政界の常。公家集団や野武士衆の解散発言をとらえて、政治家の成熟度を分析してみた。
★「抵抗するなら解散と言うなら、ぜひやっていただきたい、という姿勢で臨む可能性が極めて大きい」と久しぶりに開き直ったのが、民主党国対委員長・山岡賢次。「西松疑惑」で師と仰ぐ小沢一郎の秘書が逮捕・起訴となり、自らも献金を受け取っていることもあってか、鳴りをひそめていた。しかし、自民党有力者のように「盗っ人猛々しい」とは言わぬが、いささか“空元気”の感じもある。これまでのように地滑り的な勝利などとてもおぼつかなくなった中で、追い込むはずの解散が、追い込まれる感じに攻守ところを変えたからだ。おまけに頼みの綱の小沢が“半身不随”。元気づけようと思ったか、幹事長・鳩山由紀夫が、甲子園で活躍している小沢の地元花巻東高校の「応援に行ったら」と水を向けると、「行けるわけねえだろ」とぼやいたという。秘書逮捕以来、地方行脚も控え、東京都内のホテルに連日泊まって、謹慎の毎日だ。自民党が提案していた8日の麻生との党首討論開催も断った。おりから金融・経済情勢は「恐慌」の度合いを一段と深めており、その対策の補正予算を、山岡の言うように「徹底抗戦」できるかということだ。確実に民主党に不利になる。
★「民主党のミスで、厳しい逆風が少し緩んだだけで、自民党に順風が吹いているわけではないのに、『5月に解散すべきだ』などと声高に言えば、国民から『自民党はずいぶんと調子がいい』と批判を招くだけだ」というのは、自民党の前官房長官・町村信孝。元幹事長・伊吹文明も「敵のエラーでチャンスがめぐってきたという話で、残念ながら内閣支持率は自民党支持率を下回っている。いろいろな決断をしたときに危険な状況になる」と慎重論。一見、理路整然とした筋論だが、理路整然と間違っている。解散をいつするかは、天の時、地の利を活かした政治の総合芸術。動物本能で決める戦国武将のような決断が必要になる。小沢の秘書逮捕や北朝鮮のミサイル打ち上げは、まさに千載一遇のチャンス、ととらえる能力が政治家にあるかないかが試される時だ。自民党議席が200議席割れとか、160に激減などという風評が飛び交っている中での、次善の選択でもあり、はっきり言えばなりふり構っていられないのだ。それなら任期満了選挙で展望が開けるとでも言うのだろうか。町村は通産官僚、伊吹は大蔵官僚の出身で、さすがに官僚発言が身についている。野武士が門前にいるのに蹴鞠をついている公家のようだ。ここは野武士的な嗅覚を持つ前副総裁・山崎拓の「補正予算案が成立したあと、麻生総理大臣が衆議院の解散に踏み切ることもありうると受け止めた」という反応が政治家らしい。
★「5月に補正予算を成立させて解散するなら、新しいリーダーを選ぶ時間的余裕はない。現総理で戦うことになる」と「麻生降ろし」の中核だったはずの中川秀直が、180度方向転換をした。つられて麻生に退陣を求めていた、元幹事長・武部勤も麻生続投を「やむを得ない」と旗を巻いた。中川は、これまで「麻生首相では選挙を戦えないとの声が党内で広がっている」と発言してきたが、「小沢秘書逮捕」という大逆転の構図を予測したのは当解説だけであるから、無理もない。それにしても180度転換とは、見通しを誤ったとしか言いようがない。麻生もプロンプターを導入するなど首相業が板についてきたところもある。「北」封じ込め外交もかなりの成果を上げている。「首相にふさわしい候補」の世論調査でも、小沢に競り勝った。しかしG20関連で、言わずもがなのドイツ首相・メルケル批判をするなど、相変わらずの舌禍事件はおさまる気配を見せていない。しかし中川の言うように、5月解散なら麻生降ろしはまず消えた。言われているように「小沢が辞任すれば、麻生降ろしが再開する」という見方は、時間切れで実現しないだろう。しかし与党の選挙の顔として麻生が復活するような勢いでないことは確かだ。
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