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2009-03-13 00:00
ミサイル上空通過に“迎撃”はない
杉浦正章
政治評論家
「ミサイルだ」「迎撃だ」と、まるで日本海はミニ・キューバ危機のような様相だ。産経新聞に至っては、「防衛省迎撃に準備万端」と、ミスリーディング見出しを取っている。ここは冷静に観察する必要がある。人工衛星を偽装した北朝鮮のミサイルが、あくまで日本に「飛来する」か「落下するか」で迎撃が決まるのであって、その危険がない上空通過に迎撃はあり得ないのだ。首相・麻生太郎を始め、外務、防衛両相は誤解を招かないよう、ちゃんと国民に向けて説明する必要がある。全くずる賢いというか、見え見えというか、北朝鮮が国際海事機関(IMO)に人工衛星と称する長距離弾道ミサイル「テポドン」打ち上げに関する情報を通告した。国際機関への事前通告は、1998年と2006年に長距離弾道ミサイル発射実験した際には行われていない。これは国際世論を考慮したのと、日本政府首脳が繰り返し迎撃の可能性に言及したことが影響しているに違いない。国際ルールを踏襲することにより、日米による“偽装ミサイル”の迎撃を困難にしようというわけだ。
逆に、仮にも国際ルールを踏襲している北の“人工衛星”に、日米とも迎撃を加えることは難しいだろう。米国のオバマ政権は、ソフトパワーを売り物に外交話し合い路線を選択しており、突然北のミサイルを迎撃して“激突路線”を選択する対応に出るとは思えない。国務長官クリントンも11日、「対抗措置として幅広い選択肢がある」と、迎撃よりも制裁強化に傾いた考えを示している。 日本の場合も、首相以下、北への牽制球は度々発しているが、防衛相・浜田靖一が「制御を失って、わが国に落下する可能性があるとすれば、それに対処するのは当然だ」と述べているように、あくまで日本への“着弾”を防ぐ意味での迎撃なのであろう。まず「飛来」はあり得ないから、未熟なミサイル制御技術により、本土に落下するようなケースでの行動であろう。
昔の関東軍なら、落下と称して迎撃する場面だろうが、いまの自衛隊は、文民コントロール下にある。自衛隊法82条の2は「弾道ミサイル、ロケット、人工衛星などが日本に飛来した場合、人命や財産の被害を防ぐため、破壊できる」と定めているのであって、「上空通過」まで適用できまい。むやみに迎撃に踏み切った場合、北は「戦争を意味する」と述べており、国内の異論も巻き起こして、政治的コストは膨大なものになるだろう。迎撃を争点の総選挙も危険な賭となる。日米韓3国とも、ミサイル発射は「弾道ミサイル計画関連のすべての活動停止」などを求めた国連安保理の制裁決議に違反するという点で一致しており、発射後は北に対する制裁強化に動くだろう。国連安保理での制裁がロシア、中国の反対で実現できなければ、日米韓3国で制裁するか、独自の制裁強化に踏み切るべきだろう。
ここで北に対して警告したいのは、偽装ミサイルの発射と核開発を調子に乗って進めると、日本国民のいら立ちがつのり、核武装論などを勢いづかせ、極東の緊張を極度に高める可能性があることだ。米国防情報局(DIA)局長のマイケル・メープルズは、議会証言で「北朝鮮が核弾頭を弾道ミサイルに搭載可能なまでに小型化させることに成功した可能性がある」との認識を明らかにしている。核弾頭搭載ミサイルとなれば、事情は変わってくるのだ。いまの金正日政権に言っても無駄だろうが、国民に窮乏生活を強いる国内事情からみても、核を背景にした瀬戸際外交をもてあそぶときではないことに、早く気づくべきだ。そうでなければ自滅の道をたどることを知るべきだ。
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