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2009-02-24 00:00
麻生は退陣で国の展望を開け
杉浦正章
政治評論家
来年度予算案成立のめどが立ち、自民党内は「春の政局」に向かって動き始めているが、未曾有の経済危機のさなかに、責任政党として党内抗争の再燃は避けるべきだ。民心は首相から離反しており、まさに「信無くば立たず」の局面だ。首相・麻生太郎は、保身よりも大局を見て予算成立後退陣し、混乱を回避する道を選択すべきだ。それが名誉ある撤退である。民主党の国対委員長・山岡賢次は23日、今週中に同党が予算案衆院通過を容認したことについて、卑しい発言をした。「予算が上がったら自民党の政局となる。内紛が起きる」と述べた。仮にも国民の生活に直結する予算案を“道具”に使って他党の内紛を巻き起こそうという根性が意地汚い。
「何でも政局」の党らしいが、民主党の本心は、これ以上予算審議を引き延ばすと、経済危機で批判が自分に向かうからにほかならない。山岡の指摘を待つまでもなく、確かに自民党内は、予算が衆院を通過すれば、再来週から事実上の麻生おろしが始まる流れだ。同じ民主党でも、良識派の副代表・岡田克也は23日、「麻生首相は春に衆院を解散する力も、秋まで政権を維持する力もない」と述べ、麻生が2009年度予算案の成立直後に退陣し、新首相により4月の衆院解散と5月の総選挙が実施されるとの見通しを示した。いささか4月解散は日程的に困難とは思うが、この“読み”は本筋としてあり得ることだ。
しかし、この経済状況の下で自民党が内紛状態に陥り、首相人事をめぐる抗争が表立てば、国民の政治への不信は頂点に達する。戦前なら軍部が動いて、クーデターを起こすような事態となる。孔子の弟子が「政治とは何かと」聞いたところ、孔子は、飯を食べさせ、軍備を整え、民衆の信頼を得ることであると言った。最初に何を無くすかと聞いたところ、「兵だ」と答えた。次に無くすものは「飯だ」と答えた。「無信不立」古来民衆の信頼無くしては政治は何もなし得ないのだ。政治不信が原因か、株価が下がり、円も下がって、日本売りがささやかれている。麻生には同情すべき側面が多々ある。漢字の誤読やホテルのバー通いを、一時は天下の大新聞が目くじら建てて批判したが、これは難癖の部類だ。
しかし、言葉は政治家の生命だ。発言と訂正を無数に繰り返し、ついには郵政発言の失態に結びついてしまった。これでは国民の信頼は跡形もなく消え去るのみである。このまま行けば、支持率は一けた台となり、やがてはゼロに近づく。麻生に政治家としての資質が残されているなら、ここは国家のため、しいては党のため、退陣して、新首相にバトンタッチして、国民の政治に対する不信感を払拭すべきであろう。幸いにも3大臣兼務の与謝野馨が、野党側に評判がよい。与謝野を「選挙管理内閣」の首班として、野党との話し合い解散に持ち込み、国民の信を問い、その信に裏打ちされた政権を早期に発足させることが、麻生に残された最後の使命である。外交や内閣改造でこの難局を切り開き、反転攻勢に出られると思ったら間違う。
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