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2009-01-30 00:00
求められる「征服」から「調和」への「変化」
湯下 博之
杏林大学客員教授
昨年12月26日付けの本欄への投稿で、私は「変化」が必要なのは米国に限られるものではなく、日本を含む世界中が「変化」を必要としていると述べた。そして、どうすれば好ましい「変化」をもたらし得るかについて、日本が果たすべき役割の大きいことを指摘した。現状では、経済活動においておカネに余りにも大きな力と重みが与えられているが、人間の側面とか、人間にとって持つ意味を尊重する伝統的な日本のアプローチを再活性化し、モデルとして世界に発信することができるのではないか、と論じた。
日本の伝統的な考え方や生活態度が世界を救う貴重な貢献となり得る分野は、前述の経済活動の分野に限られない。例えば、国際平和や地球環境といった、現下の重要な国際的課題についても、日本の出番が来ていると思う。私達は西洋文明に多くを貰っており、西洋文明に起源を持つ種々の発展のお陰で、物質的に快適な、便利な生活を楽しんでいるが、西洋文明にも欠陥がないわけではなく、時には修正が必要になることがある。現在がまさにそうであり、適切な修正をもたらす上で、日本の果たせる役割が大きいと思う。
西洋文明の根底にある考え方の特色の一つは「征服」というコンセプトで、単に敵を征服するのみならず、自然といったものまで「征服」するという考え方である。この考え方が種々の発展の達成に役立ったのは事実であるが、無制限に「征服」を追い求めると問題を生じることがある。現在、世界が直面している問題のうち、地球温暖化の問題はその一例である。世界の各地で不幸な結果をもたらしている民族紛争や宗教紛争も、この問題と無関係とは言い切れないように思う。勿論、宗教そのものは貴重であり、多くの人々を救っているのであるが。
日本ないし東洋的な思考の一つである「和」ないし「調和」を重視するコンセプトは、上記の問題を軽減する上で有意義な貢献となり得ると考える。世界が一体化し、多様な民族、多様な宗教等が緊密に接して、共存して行かざるを得ない現代社会にあっては、部族であれ、宗教であれ、異なるものを排斥したり、打ち負かしたりするのではなく、多様性を受け入れ、その間の和や調和が重視されなければならない。そして、そうなれば、世界はもっと平和になり、開発や繁栄の達成も容易になるであろう。
調和が人間と自然との間で真剣に探求されれば、地球温暖化などの問題が解決されるのみならず、精神文化も豊かなものとなるであろう。自然との共生は、日本人の生活の基本的な考え方であり、精神生活や文化の面で日常の生活においても見られるものである。和をもって尊しとし、自然との共生を重視する日本の伝統的コンセプトを世界中に広めるべき時が来たと思う。
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