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2009-01-28 00:00
自動車を野放しにして未来の都市は成り立つか
入山 映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
久しぶりにハノイ、バンコック、ジャカルタを2週間で回るという忙しいミッションの旅をしてきた。「徒歩5分、車で30分」という渋滞ぶりがバンコックとジャカルタでは相変わらずで、その間を軽業もどきですり抜けてゆく二輪車を見ていると、二酸化炭素ガスの排出規制というのは、思っているほど簡単ではないなあ、とため息が出たりもする。それでもジャカルタでは3車線の内の一番内側(外側、つまり歩道側ではない。念のため)の1車線をバス専用にして、それも日本のバスレーンのように他の車が入ってよいというのではなく、全くの一般車立ち入り禁止で、その代わりバス停は歩道橋で真ん中の島に作るというシステム。このシステムの拡大と、3人以上乗っていない車は都心乗り入れ禁止、という措置(タクシーはこのかぎりにあらず)でしばらくしのいでおいて、いづれは都心乗り入れ乗用車全てからオカネを取ろう(road pricing)という、石原都知事が聞いたら絶賛しそうなアイディアがあるそうだ。
そのバス専用レーンを、時々警察に先導された黒塗りの車が吹っ飛ばしてゆく。タクシーの運転手は「偉いさんだよ」と肩をすくめるが、かつての吉田茂氏のワンマン道路もかくや、ということかもしれない。バンコックでは軌道システムによる公共交通機関の整備がだいぶ進んできた。地盤の悪さもあって、首都高速のように空中を走っている区間が多く、景観的にはいささか興ざめだが、そんなことにかまってはいられないのだろう。それにしても、渋滞ぶりは往事といささかも変わることがないのだから、交通のキャパと交通量のいたちごっこは、どこでも勝ち目のない戦いなのかもしれない。公共交通機関工事中の路面交通の制限を最小限にするためには、軽量のモノレール開発しかなさそうで、そんなところに日本の技術が先駆的な役割をつとめれば、これは福音だろうと思われたことだった。
自動車メーカーの減産だ、雇用調整だのほうだけが、マスコミを賑わしているが、自動車という交通手段を大都市で野放しにするというのは、金融システムと同じで、いづれ考え直さなければならない時がくるように思う。ことは排気ガスの問題だけではないからだ。途上国の大都市では、経済発展に伴ってこれが共通の問題になっているのは何処も同じだが、ことはもちろん途上国に留まらない。あのだだっぴろいロサンゼルスでも周知のように、カープール車線(こちらの方はジャカルタと違って2人以上だが)を別線にするという苦肉の策を取っているが、それ以外の3車線か4車線をぎっしり埋めた車の洪水を見ていると、生活というものを自由に動き回る自家用車を前提にしたスタイルに設計してしまった国の将来はどうなるのだろうと思う。その気になれば公共交通機関だけで何とかなる日本の大都市を作ってくれた先人達に感謝したくなる。闇雲に道路を造りたがるだけの後輩達は、少し考えを変えた方がよろしいのではなかろうか。
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