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2009-01-16 00:00
消費税問題で小沢の仕掛ける“蟻地獄”
杉浦 正章
政治評論家
自民党内の消費税対立は「渡辺離党」問題のように簡単ではない。まさに消費税政局になり得る。首相・麻生太郎が消費税の予算関連法案付則明記にこだわれば、その先には民主党代表・小沢一郎の仕掛ける“蟻地獄”が待っている。内閣総辞職か解散かである。進退窮まる前に「2011年」を削除または修正するか、自民党得意の玉虫色の文言調整で処理するかの問題だ。内閣の命運をかけるほど固執する価値はない。確かに麻生は「空気が読めない」(町村派代表世話人・谷川秀善)。そもそも、政府・与党の合意は、経済情勢好転が前提条件であるにもかかわらず、法案の付則への「2011年消費税明記」に固執する。いったん閣議決定した方針でも、法案に明記するかしないかでは、政治的な意味が180度異なることに麻生は気づかない。
上げ潮派と財政再建派との宿命的対立に加えて、選挙前で議員心理が動揺する時期である。このままでは、中川秀直ら反麻生の動きを加速させ、造反は3分の2条項を覆すに必要な16人を確保しかねない流れだろう。麻生は消費税での世論の追い風を期待しているのだろうが、最近の世論調査の結果を見ても、「財政再建への誠意」など分かる国民は少ない。こうした空気を察知して、明らかに小沢は、政局化の焦点を「定額給付金」から「消費税」に移しつつある。給付金問題では自民党の造反を誘えないと判断したからであろう。しかし付則への2011年問題は別だ。これは政局になると考えている。ささやかれる小沢らの“蟻地獄”戦略は次のような展開だ。
まず与党は、23日に2次補正と関連法案を処理できれば、26日に衆参両院で政府4演説を行い、本予算案の審議に入る方針だ。しかし政権の危機は3分の2条項による再議決よりも早く来る。2月下旬にも予定される、予算案と同関連法案の採決だ。「2011年」が付則に明記されたままなら、関連法案の衆院本会議採決に確実に造反がでる。この数が16人を超えれば、小沢は3分の2条項による再可決は不可能と見て、参院での予算審議を1か月もかけずに3分の1程度で切り上げるのだ。そして衆院での再可決を早める。造反で再可決は不可能となるから、麻生内閣は完全に行き詰まる。つまり3月に解散か総辞職に追い込めるというわけだ。
問題は、この落とし穴にみすみす麻生政権がはまるかどうかだ。小沢の裏をかくには、造反を誘うようなことをしないことに尽きる。もともと首相になったときから、前言撤回は麻生のお家芸だ。今回も「勇気ある迷走」ぶりを発揮すればよい。総選挙に負ければ、付則などは吹き飛ぶ。どうも政権に就くと首相というのは、大平正芳の一般消費税導入時のように、“愚直”を売り物にしたくなるものらしい。今回はコップのなかの嵐では収まらない。政権がかかっているのだ。
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