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2009-01-07 00:00
日本で学会の国際会議を開催する場合の注意点
池尾 愛子
早稲田大学教授・デューク大学客員研究員
昨2008年末に、欧米の研究者たちに、日本で学会が主催する国際会議の助成金の申請条件について説明する機会があった。電子メールや口頭で説明するうちに、日本の研究者の一部にも誤解があることがわかってきた。日本で開催する国際会議の助成金制度については、研究者側の希望により、1990年代初頭に大きな変更が施され、その後大きくは変わっていないように思われる。それゆえ、私自身が1995年8-9月に東京で開催した東アジア国際学術会議の組織委員会メンバーとして準備に積極的にかかわったときの経験に基づくことになるが、同助成金の特徴を簡単に日本語で紹介しておくことに意義があると思うようになった。
1990年頃までに、日本でも国際会議を開催する機会が増えて、国内での助成金獲得競争が始まっていた。そして、社会科学系の学会で1990年代半ばに大きな国際会議の開催を計画する学会が幾つか現れ、助成金制度の改革が必要不可欠になった。そこで、学会が主催する国際会議についてはかなり規制をかけ、研究プロジェクト・ベースの資金調達を推進する仕組みを整え、個人やグループの研究が学会活動の犠牲にならないように配慮することにしたのである。組織者が助成金申請者になることには変わりはなかったようだが、申請学会に組織者の役割を重視するように求めることにし、助成金の申請条件には次のようなものが加わったようである。こうした変更については、研究者の集まりである日本学術会議から、財団など助成金提供者に要請があったと、財団側から伺った。
1.組織者は国際会議の組織に最初から参加する。
2.組織委員会がプログラムを作成する、あるいは、プログラム委員会を構成する場合には、組織者は必ずその構成員に入る。
3.国際会議助成金に、海外からの参加者の旅費は含められない。
4.国外研究者は申請資格がない。
1995年8月にエコノメトリック・ソサエティ(ES=計量経済学会)の世界大会が東京で開催された折には、日本経済学会(理論・計量経済学会)が全面的に協力した。同学会員の国際舞台での活躍は、ESの協力なくしてはありえなかったといってよい。同大会に1日だけ出席した際、数人の日本経済学会会員から、参加者の旅費が開催時の注意点になり、「参加者全員が旅費等は自分で払うこと」、つまり「先進国からは誰も(会議資金以外の資金でも)招待してはいけない」という原則を作り、それを徹底したと説明を受けた。彼らからは、日本で学会が開催するいかなる国際会議においても遵守されるべきルールであると、異口同音に強固な説得を受けた。同学会では組織者の負担を緩和するために、寄付も募ったのであるが、こうした組織者以外の学会員からの寄付も、学会主催の大きな国際会議の開催においては必要不可欠といえる。
組織者の役割を強化させたことについては、1996年頃に世界大会を予定していた他学会の組織者から、1994年当時に率直な話を聞くことができた。「ヨーロッパには、小さな学会が大きな会議資金を調達しようとすることがあり、その場合、2次的目的として同分野であっても研究関心の異なる人に組織者の役割を押し付けて、嫌がらせに会議組織を使うことがある。日本ではそうした事態が避けられるようにした。つまり、ヨーロッパの伝統的基準で国際会議をする場合は、日本では資金調達ができないようにしたのです」と。学会が国際会議を主催するには資金が必要であるが、仮に外部資金に頼らない場合には、寄付金集めが不可欠になる。もし誤解があれば、ご指摘いただきたい。
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