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2008-12-16 00:00
政権基盤を直撃する定額給付金
杉浦 正章
政治評論家
通常国会冒頭から焦点になる定額給付金問題は、“腹背の敵”が鮮明になってきた。民主党は定額給付金の2次補正からの切り離しを主張、政府・与党は一体維持の立場だ。民主党に自民党内反主流が同調すれば、衆院3分の2の再議決は困難になり、一挙に「政局」となりかねない。政府・与党がこの場面を乗り切るには、国民に直接訴えるしかあるまい。キーワードは「実態世論」の喚起だ。定額給付金問題は、まずマスコミの世論調査がボタンを掛け違えた。調査の設問が「家計に必要か」ではなく、景気対策などに「有効な政策と思うか」と聞いた。これは世論調査の意図的なマジックであり、聞かれた方はだいたい「有効でない」と答える。これで「60%から80%が反対」と伝えられているのだ。マスコミで動く野党は、この世論調査を金科玉条として、給付金反対論を展開している。同様にマスコミで動く自民党内反主流も、「思い切ってやめたほうがよい」(山崎拓)と揺さぶりのテコにしようとしている。
これに対し政府・与党は定額給付金を景気対策の2次補正とワンパッケージにして臨もうとしている。民主党国対委員長の山岡賢次が「景気対策を人質にしている」と批判し、「定額給付金と2次補正を分離せよ」と主張するゆえんだ。しかし自民党国対委員長・大島理森は、(1)給付金は経済・景気対策ではなく、(2)家計を直撃している物価上昇などに対する家計支援対策だとして、「あくまでパッケージとしてやる」と発言している。首相・麻生太郎にしてみれば、給付金を切り離し、あるいは事実上断念すれば、これこそ“究極の食言”となり、ただでさえぐらついている政権基盤を直撃する。
一方、民主党は景気対策の2次補正に反対しているように受け取られたくないが、自民党としては、まさにそこが思うつぼである。したがって通常衆院2日、参院2日の4日で成立する通常国会冒頭の補正予算処理は、与野党の思惑が錯綜して迷走を重ね、場合によっては給付金の年度内支給が間に合わなくなる可能性がある。 政府・与党にとって問題は、マスコミの作った世論、いわゆる「新聞世論」でなく、「実態世論」をいかに喚起するかにあるだろう。つまり生活支援としての給付金に反対して受け取らない層は、ほとんどいないという現実をどう掘り起こすかだ。小渕内閣の地域振興券もマスコミの反対で評判が悪かったが、19.4%まで落ちていた支持率は、支給後に50%台まで回復している。
代議士らの選挙区での話題も、給付金がいつになるかという点に絞られているようだ。したがって政府・与党は、給付金を実現するにはいわゆる“声なき声”をいかに強めるかである。それには全国津々浦々にまでキャンペーンを展開すべきだろう。また批判の急先鋒に立つ民放テレビに、自民、公明両党がコマーシャルを出して、家計支援のイメージを作り上げる必要もあろう。要するに、敵将を射んとせば馬を射よである。民主党代表代行・菅直人が自民党造反組の動きにほくそ笑んでいるが、事の成否は「実態世論」の喚起にかかっている。
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