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2008-12-12 00:00
政治家発言の裏の裏を読む
杉浦 正章
政治評論家
政治ウオッチを半世紀近くも続けていると、政治家の発言を一筋縄ではとらえない習性がつく。その本質をどうしても分析したくなるのだ。分析の中から政治の真実が見えてくる。渦中の人の発言の裏の裏を探ってみた。
★「この会は純粋な勉強会だから安心していただきたい」とは、11日の自民党「生活安心保障勉強会」の立ち上げにおける元幹事長・中川秀直の発言。これは、そう発言せざるを得ない反中川包囲網が所属の町村派に生じてしまって、当初の「反麻生勢力旗揚げ」を方向転換せざるを得なくなった末の苦渋の発言だ。町村派は中川の“旗揚げ”を聞くや、森喜朗、町村信孝ら首脳が協議して“なだれ込み”作戦を取ることにした。麻生支持の安倍晋三や首相側近で古賀派の菅義偉を参加させて、反麻生色を消してしまおうという高等戦術だ。反麻生ならとても57人は集められないところだったが、予想外の人数が集まったのはその結果だ。中川は同日夜「今は倒閣の時期ではない」と漏らさざるを得なかったわけだ。旗揚げどころか中川孤立が際だった結末だった。民放テレビが報じるように、とても政界再編の中核などにはなれない。安倍や菅が参加して、反麻生の陰謀をたくらめるわけがない。別組織に衣替えするしかない。
★「自民党内でごちゃごちゃしていたって、国民は受け入れないし、わたしどもとも関係ない」とは、渡辺喜美ら自民党離党・新党志向グループへの民主党代表・小沢一郎の発言。これは、全く逆だ。渡辺らが17人離反して与党が3分の2の議席を維持できなくなれば、一挙に政局だ。「関係ない」どころか大ありなのだ。「関係ない」と言いながら、離党をけしかける“仕掛け”だ。ただ小沢は渡辺の父親・渡辺美智雄に煮え湯を飲まされているから、慎重なだけだ。94年細川政権末期に小沢は渡辺美智雄に「自民党から50人ほどを連れて出てきてほしい。そうすればあなたが総理だ」と誘いかけている。渡辺もいったんこれに乗ったが、最終的に踏み切れず、小沢の仕掛けは失敗に終わった。小沢は渡辺家の血筋を見ているのである。それにしても親子二代にわたる“仕掛け”とは、小沢も恐ろしいほど執念深い。
★「非常時の景気・経済を何とかしなくちゃいけない気持ちがあふれている」とは、公明党代表・太田昭宏が渡辺、塩崎恭久らの反麻生の動きを誉めあげたように見える発言。公明党内から「褒めすぎ」の批判が出たくらいだが、裏がある。この時点で批判すれば、渡辺らをますます追い込み、場合によっては12日の重要法案再可決に向けて反対の動きをしかねない。そこで言いたくもない発言をしただけのこと。腹の中は煮えくりかえっている。
★「麻生首相は衆院解散・総選挙の時機を逸した」とは、自民党の前財務相・伊吹文明の発言。一見首相批判のように見えるが、これも解散引き延ばしを狙う麻生援護の高等戦術。その証拠に伊吹は「首相には一番いい踊りを踊ってもらう必要がある」と、手放しで麻生を支持する発言を繰り返している。「こうなった限りは、どんなことを言われても、石にかじり付いてでも、頑張らないと仕方ない」とも述べているように、真意は早期解散による“自民党集団自殺”の回避にある。
★「後ろから鉄砲玉を撃つことは、絶対無いように」とは、古賀誠が塩崎をけん制する言葉だが、これだけはそのまま素直に受け取れる。発言といい、すごみといい、“川筋モン”の真骨頂がでた。
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