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2008-11-28 00:00
憲法は日本の国際平和協力を禁止しているか?
湯下 博之
杏林大学客員教授
東アフリカのソマリア沖のインド洋やアデン湾で海賊が頻繁に出没している。ロンドンの国際海事局(IMB)などによると、ソマリア沖では今年、海賊による船舶襲撃が昨年の2倍に当たる95件発生し、39隻が乗っ取られた。日本の船舶会社などが運航する船も9隻が襲撃され、3隻が乗っ取られたという(11月19日付読売新聞)。これに対して、国連安全保障理事会は6月と10月にソマリア沖での海賊に武力行使も含めた対応を各国に求める決議を採択し、北大西洋条約機構(NATO)諸国やインドなどが軍艦を派遣しているという(11月19日付読売新聞他)。
国際社会には、国内の社会とは異なり、政府もなければ警察もない。公海上にある船舶については、その船舶の旗国(登録国)に管轄権があるが、海賊については例外で、全ての国に取り締まってよいことになっている(国連海洋法第105条)。そこで、関係国が取り締まりを行うこととなるが、今回の場合は、国連安全保障理事会の決議に基づく国際協力活動の意味をも有している。日本政府も、海上自衛隊の護衛艦などを派遣して、民間の輸送船を海賊から守れるようにするため、特別処置法を制定する方向で検討に入ったと報じられたが、その実現には高いハードルがあり、そのひとつは憲法の解釈上禁止されている集団的自衛権行使とのかねあいであるという(11月19日付日本経済新聞)。
これは、大変困ったことである。なぜなら、国際社会が協力して海賊を取り締まろうという時に、日本は、自国の船舶が海賊の被害にあっているにもかかわらず、憲法上問題があるから参加できないという、実に不合理なことになるからである。集団的自衛権の問題が、戦前の軍部独走の苦い記憶とも絡んで、政治的にも、また、国民感情の上でも、実にデリケートな問題であることは事実である。しかしながら、平和主義の主要国の一つとなった日本が、国際社会の平和や秩序を維持するための国際協力の一環であっても、海外での武力行使には一切参加しないとすることは、国際社会の有力な一員として適切でないばかりでなく、憲法の趣旨にも沿わないと思う。
私は、去る3月に、「嘆かわしい集団的自衛権と集団安全保障の混同」(本欄3月28日付け投稿)と題して、同趣旨のことを述べたが、憲法第9条は、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇または武力の行使を、「国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する」と規定しているのであって、国際社会の一員としての応分の協力としての武力の行使をも禁じているとは考え難い。憲法前文も、「政府の行為によってふたたび戦争の惨禍が起こることの無いようにすることを決意し」と述べるとともに、「われらは、平和を維持し、専制と隷従、圧迫と偏狭を地上から永遠に除去ようと努めている国際社会において、名誉ある地位を占めたいと思う」と述べている。
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