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2008-11-20 00:00
オバマ登場でアメリカとアフリカの距離は縮まるか
岩國 哲人
衆議院議員
史上最大の奴隷使用国、言いかえれば史上最大の人権無視大国であったアメリカ。そのアメリカがアフリカの血を引き、インドネシアの小学校で育ち、アメリカの最高の大学で学び、多様な文化と宗教に接してきたオバマ大統領の誕生により、アフリカとの心理的距離感を一挙に縮めることになれば、それは世界の新秩序創成に大きく寄与し、当然ながら日本の外交にも大きな影響をもたらすことになるだろう。
私もかつてはロンドン、パリ勤務時代に、欧州、中近東諸国とともにアフリカを担当し、ケニア、エジプト、エチオピア、ウガンダ、タンザニア、そして最近ではモロッコ、南アフリカなどの国々を訪問してきた。アフリカは各種の未開発の資源を保有し、国運総会の中で4分の1を占める53票という大きな票田を持つ一方、地球温暖化の影響を最も大きく受けて、飢餓などに苦しんでいるのが現状である。そのアフリカとどのように取り組むかは、先進国にとって最重要な経済・外交戦略になる。アフリカは人類発祥の地とされながら、長い間「暗黒の大陸」という表現をされてきた。17世紀以降ヨーロッパ人がアフリカに進出し、地理に関して無知という「暗黒」に加え、文化の違いに基づく「野蛮」というイメージが加わったからである。奴隷貿易を正当化するためには「アフリカ人は野蛮である」必要もあったのだ。
そのアフリカに、皮肉なことに、地球の危機とともに暗黒から開放される希望の曙光が見え出している。しかし、アフリカの各国が抱えている問題も多く、根も深い。最大の問題は政治的未発達にある。だからこそ、世界最大の経済大国アメリカが、従来のベルリンの壁ならぬ「偏見の壁」崩壊を機にアフリカ諸国との接近を進めることは、世界が抱える貧困、格差、健康、環境、教育、エネルギーなどの問題の解決に大きな希望を与えることになることは間違いない。
そのアフリカの現状はどうか。本欄への6月9日付けの私の投稿「アフリカの夜明け:『暗黒の大陸』から『希望の大陸』へ」でも触れたが、ケニア、南アフリカなどアフリカの中では比較的民主的であった国でも、強権的独裁の被害や、選挙制度、議会と政府のあり方をめぐる対立激化の報道が目立って多くなってきている。暗黒の大陸が希望の大陸、太陽の大陸と呼ばれる日までの道は遠い。しかし、その日は必ずやって来る。そのためにも、先進国と呼ばれる国が何を出来るのか、何をすべきなのか、注目し続け、日本もしっかりとその責任を果たしていかなければならない。アメリカが動くから日本も動く…、アメリカの言う通りに行動すればまちがいない…、そういう時代は終っている。オバマ新大統領の世界政策、アフリカ諸国との協調体制づくりに期待し、注目しながらも、日本のプレゼンス(存在感)をどのように構築していくか、これから問われてくるのは、日本の外交的発想力と発信能力である。
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