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2008-11-20 00:00
2次補正提出時期で割れる国論
杉浦 正章
政治評論家
自民・民主両党党首会談を契機に第2次補正予算案の国会提出とテロ特措法をめぐって国会対策で国論が完全に二分した。朝日新聞、毎日新聞が早期解散実現を意図した2次補正早期提出論を説き、報道ステーションなどの民放が完全にこれに乗っている。他方で読売新聞と、珍しくしっかりした主張を始めた財界が、民主党の「テロ特措法人質」を厳しく批判するという構図だ。主導権を握る首相・麻生太郎がどう対応するかだが、答えは簡単だ。「負ける選挙はしない」という路線だ。最近ではこれほど国論の対立が鮮明になったことは珍しい。とりわけ財界の麻生支援とも取れる発言が目立つ。
日本経団連会長の御手洗冨士夫が「国際協力を人質にし続ければ、政争の具にしているとの批判は免れない」と民主党の姿勢を厳しく非難するかと思えば、経済同友会代表幹事の桜井正光も「政局絡みの話題にするのは、大変に問題」と民主党の対応を強く批判した。財界がこれほど敏感に反応するのは久しぶりだ。財界と連係プレーをした佐藤内閣時代を思い出すが、おそらく民主党政権への危惧(きぐ)と、財界との結びつきの深い麻生支援の意味があるのだろう。裏でつながっているかも知れない。マスコミ界も読売新聞が「安全保障を政局の具にするな」と題する社説で、「テロとの戦いの継続や国際金融危機への対処は、今の日本の最優先課題だ」と強調すると共に、民主党代表・小沢一郎の対応を「政局至上主義の復活だ。これでは、政治の責任は果たせまい」と決めつけた。
これに対し、朝日と毎日は、基本を早期解散に置き、麻生政権と真っ向対決路線だ。両紙とも定額給付金反対を社説に掲げているが、朝日が小沢の打ち出した2次補正早期提出論にそのまま乗って「状況を打開するには、やはり早く総選挙をするしかないのだ」と“本音”を書けば、毎日は「(首相は)要するに政策ではなく、政局判断なのだ」と麻生の“解散逃げ出し作戦”を批判する。極めて興味深いのはテレビ朝日の報道ステーション一色清(朝日新聞編集委員)の最近の発言だ。政治問題では必ず翌日の朝日の社説を反映させるから、事前に朝日の主張が予測できる。19日夜も「民主党の方が正論。麻生首相の方が追い詰められてゆく。解散総選挙をやるのがいろいろな意味でよい」と20日の社説をそのまま事前に踏襲している。それにしても「民主党が正論」とは朝日の論説の本音か。
こうした国論の分裂、百家争鳴状態に麻生がどう対処するかだ。自社対決時代は「選挙は朝日の逆をいけば勝てる」と首相・佐藤栄作の側近が言っていたが、まさに今もそうだろう。中立を標ぼうしながら民主党政権を目指す朝日や公共の電波をフル活用して政権打倒を目指す民放の路線に左右されていては、自民党総裁としての役目は果たせまい。現実政治を見据えた議論を展開すれば、麻生の解散先送りのための2次補正提出回避は、総裁として取らざるを得ない選択なのだろう。第一、定額給付を受ける方の国民は、公約通り年度内の支給を受けられれば、その処理は臨時国会だろうが、通常国会冒頭だろうが、問題はない。「政治駆け引きに堕して、本質を忘れるな」と言いたい。
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