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2008-11-07 00:00
来年1月解散もあるまい
杉浦 正章
政治評論家
自民党各派から最近一斉に「年内解散はない」の合唱が生じているが、そんなものはもともとない。猫を見て「これは犬ではない」と言っているようなものだ。早期解散とすれば1月通常国会の冒頭にあるかないかだが、これもまずないだろう。麻生としては来年度予算案を通過させ、霞ヶ関改革を断行して、春以降に解散のチャンスを狙うのが本筋の読みだろう。最大派閥の町村派が5日の会合で、「年内の衆院解散はない」との意見が大勢を占めたのに続いて、伊吹派も会長・伊吹文明が一時の解散風の高まりに「風評被害に遭ったような状況だ」と、自らが幹事長時代を含めて解散風を吹かせ続けた事など忘れたような口ぶり。国対委員長・大島理森も「年内は選挙はない。来年は1月1日から選挙態勢に入ってください」。注目の公明党も幹事長・北側一雄が「年内の可能性は低くなっている」との見方を示した。その上で、「早期の解散は十分考えられる。臨戦態勢を持続していく」とトーンダウンした。
要するに、麻生の解散急ブレーキが全与党的にやむを得ないとする空気に変わったと言うことだ。その背景には、自民党が実施した選挙情勢調査が与党に厳しい結果だったことや、金融危機への迅速な対応が必要なことなどがあげられるが、最大のポイントは民主党の国会対策が「対決基調に変わる」とする新聞の読みとは異なり、きわめて“紳士的”に様変わりしたことだ。焦点の金融機能強化法案も衆院財務金融委員会で民主党は政府原案に反対し、修正案には賛成。修正部分だけでも賛成して、金融危機対応に消極的との批判を避けるという苦肉の策を選んだ。新テロ法案も前空幕長・田母神俊雄の11日参考人招致が決まり、今月中旬の成立が見通せるようになった。
首相・麻生太郎の金融危機フル活用の解散回避戦略が効を奏した形であろう。麻生は、無駄遣いや官製談合の温床となっている国土交通省の出先機関地方整備局、三笠フーズの事故米問題を見逃し農林水産省の出先機関農政局の廃止を含め、検討を指示するなど、ようやく行政抜本改革に乗り出した。今後さらに官僚不祥事の巣である厚労省、社会保険庁改革に取り組むことが望まれるところだが、これらの改革を実現させるには時間がかかる。そこで1月解散の可能性だが、津島派総会で、元財務相・額賀福志郎が「一番早い時期は、来年度予算審議の冒頭」と述べ、通常国会冒頭での解散に言及した。
この発言のポイントは「一番早い時期」としていることだ。たしかに可能性としては1月解散を否定できない。しかし麻生にしてみれば、選挙情勢が少なくとも与党過半数割れを脱出しなければ、解散はできない。それには着手した行政抜本改革と霞ヶ関症候群に大なたを振るうしかない。金融情勢も15日の金融サミットのフォローアップが不可欠だろう。通常国会は景気対策に重点を置いた来年度予算を現政権が編成するのだから、成立させる義務がある。1か月以上の政治空白をつくって、暫定予算を組むようなことは許されない。こうみてくると、解散をしない理由は山ほどあるのだ。おそらく年末になってくると解散はさらに延びる雰囲気となり、来年4月以降が、麻生側からリークされるようになってくるだろう。
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