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2008-10-30 00:00
麻生、政権立て直しの時間獲得
杉浦 正章
政治評論家
ジェームス・ディーンの名画「理由なき反抗」で崖っぷちまで猛スピードで車を走らせるシーンがあったが、首相・麻生太郎もぎりぎりの急ブレーキをかけて、解散を止めることに成功した。こちらは「理由ある反抗」だが、与野党に不満がくすぶったとはいえ、決定的な打撃には至らなかった。金融危機という天与のチャンスをフル活用した結果だ。これで麻生政権は態勢立て直しの時間を獲得した。恐らく解散総選挙は来春以降となろうが、その間に為すべきことは、自民党支持率激減の直接原因である社会保険庁の醜態に象徴される「霞ヶ関症候群」にメスを入れることだ。霞ヶ関改革なくして政権維持はあり得ない。
政権交代を目前にして麻生に逃げ切られた野党の悔しさは、いかばかりであろうか。「覚悟のない首相はドライフラワー」(国民新党代表代行・亀井静香)「麻生政権は時間を置かずして死に体になっていく」(民主党代表代行・菅直人)と口を極めて批判するが、どこか“負け犬の遠吠え”のようでわびしい。早期解散を主張し続けた公明党も麻生の粘り腰に負けた。怒ったふりをしているが、内心仕方ないと思っているのだろう。その証拠には自民党と一緒になって共同通信社の記事に抗議している。共同が麻生と代表・太田昭宏の会談を「怒号が飛び交った」と表現したことに抗議文を出したのだ。公明党にしてみれば、このまま選挙をやって自民党と一緒に“抱き合い心中”となっても困るのだ。
民主党はなお早期解散に追い込むため、国会戦術を硬化させているが、いったん黙認を決めた新テロ法案にしても、国対委員長・山岡賢次が「参考人質疑などが終われば直ちに採決に応じる」と語っている。金融機能強化法改正案についても、民主党の修正要求を与党が受け入れるなら、早期採決に応じる方針だ。「戦術的な引き延ばしはしない」とも山岡は述べており、解散延期にもかかわらず、態度の硬化ぶりは弱い気がする。自民党内も同様に、不協和音を出していた中川秀直が「通常国会では来年度の予算関連法案も通さなければいけない。野党は徹底抗戦になるので、また60日ルールを使うことを考えれば、来年夏の都議選まで解散するタイミングが少なくなる」と語り、衆院選は来年9月の任期満了に近づくとの見通しを示している。
たしかに麻生は、政権継続を目指す急ブレーキに成功したにもかかわらず、1月解散をしたのでは何の意味もない。ここは何が何でも通常国会を乗り切って、その間に態勢を建て直すしか選挙に勝つチャンスがない、と思っているに違いない。野党と新聞論調が早期解散に勢いづくのは、霞ヶ関症候群と政権をめぐるスキャンダルだ。それを回避して、金融危機対策に専念するとともに、一刻も早く霞ヶ関に改革のメスを入れることが必要だ。その上での解散となるのは、やはり春以降、限りなく任期満了選挙に近くなるのではないか。
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