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2008-10-29 00:00
テヘラン市長の講演を聴いて思ったこと
入山 映
サイバー大学客員教授・(財)国際開発センター研究顧問
外務省の招きで来日しているテヘラン市長ガーリーバーフ氏の講演を外国特派員協会で聴いた。同氏はイランの次期大統領の有力候補であるのみならず、現アフマディネジャド大統領に対する批判的なコメントでも知られている。通訳を介してのペルシャ語による講演であったが、講演そのものは大都市市長としての一般論と問題意識に留まり、あまり刺激的なものではなかった。質疑に移ってからのコメントも、「イランの当面する課題は、経済と開発にあり、雇用とインフレが最大の問題点だ」といった、あたりさわりのないものが多かった。それでも、なかに数点、興味深い発言も聞かれたので、それらを中心に紹介してみたい。
聴衆の最大関心事はもちろん核兵器問題にあり、質問の多くも繰り返しその点に集中した。これについては、北朝鮮を暗示しつつ「IAEAの枠内に留まることが重要である」といった、さして面白みのない回答に終始したが、インドに対してダブル・スタンダードを取る米国に対する批判と受け取れる部分もないではなかった。微温的な回答に少しじれた質問者が、イスラエルのイラン核施設攻撃計画をブッシュ大統領が思いとどまらせたことに言及し、「貴方は、それについてブッシュ大統領に謝意を表するか」と挑発したのに対し、「一体戦争好きはどこのどなただったでしょうかね」と答えたのも、その一例だ。それに比べて、「イスラエル国家の存在を容認するのか」という質問に対して、これまた直接にではないが、「宗派の如何を問わず、いかなる人間にも、生存して、良い生活を営む権利がある」とした後で、「いかなる人間にも、故郷に帰り、正当な選挙によって国家と政府を建設する権利がある」と述べ、パレスチナ、イスラエル両国家併存の論理を否定したのが、注目された。中東地域が極めて微妙な地域であることを強調すると共に、「イラン抜きでは重要課題は何も解決しないし、大国が地域的勢力の利害を認識しない限り、中東に永続的平和はあり得ない」ともコメントした。
一方、当然のことながら、アルカイダに対しては、これを容認せず、「そのような勢力と交渉をしようとしている政府の存在は許し難い」とも述べた。これが米国のことを指しているのか、それともその影響下にあるアフガニスタン政権あるいはパキスタン政府のことを指しているのかについては、明言を避けた。アフマディネジャド大統領との意見の相違についての質問に対しては、「多様な意見の存在はどこにも見られることだ」といなすと共に、「誰が大統領になるか、というのは重要な問題ではない」として、「イランの基本的な政治スタンスは共有されている」との認識を示したのも、これまた当然とはいえ、興味深かった。
本国からの同行者と見られる5、6人のグループが、全く自分たちだけの会話に終始し、国際的な聴衆と自由に交流しようとする態度が見られなかったのが、やや「違和感」として会場に存在していたことも付記しておこう。もしかすると、単に外国語能力の問題だけだったのかもしれないが、この旧くて若い国が国際政治に溶け込むのには、しばらく時を要するかもしれない、というのを垣間見させるエピソードではあった。
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