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2008-10-28 00:00
朝日・毎日の社説は世論とかい離している
杉浦 正章
政治評論家
朝日新聞と毎日新聞が28日大型社説を組み、首相・麻生太郎の解散先送りを批判しているが、影響力が大きい全国紙とも思えない論理矛盾に満ちた論調である。加えて、国民の圧倒的多数が世論調査で解散先送りを求ている、という切実かつ深刻な経済情勢を理解していない。国際経済情勢への認識も浅薄だ。いっそ両紙の社説は「民主党政権を早期に作りたい」と“本音”を主張してはどうか。朝日新聞は「市場パニックと総選挙、ずるずる先送りでいいか」という社説で「いたずらに解散を先延ばしするのは、逆に、経済や国民生活を人質にとって政権の延命を図っているのではないか、と見られても仕方あるまい」と感情論をむき出しにしている。政治の裏を見れば、確かに思惑はさまざまだが、麻生内閣は矢継ぎ早の金融危機・経済対策を打ち出している。
福田政権だったら、と思うとりつぜんとする。恐らく後手後手で状況の悪化を招くだけだっただろう。「国民生活を人質に取る」という表現は、最大限の政権侮辱と取れる主張であり、首相は抗議をするに値する。社説は「危機が深刻であればあるほど、民意に裏打ちされた正統性のある政権でなければ、本格的な対策や経済の立て直しはできない」とも述べているが、本音が漏れた。これは民主党のかねてからの主張とまったく同じである。いうまでもないが、総選挙以来3年を経て解散しない政権は枚挙にいとまない。これらがすべて「正統性のない政権」だったであろうか。第一「正統性」を主張する法的根拠はどこにあるのか。
選挙に勝てば、4年間は「正統性」のある政権が保証されている。3年前の総選挙で民意に裏打ちされ、憲法に基づいて国会で選ばれた政権である。社説子は憲法すらも理解していないとすれば問題がある。あいまいな情緒的表現は避けるべきだ。「市場の大混乱の背景には、そんな政治の現状に対する悲鳴もあると見るべき」としているが、市場の混乱はまぎれもなくアメリカ発の金融危機にあるのであって、麻生政権だから発生している訳ではない。経済の因果関係をまるで理解していない。最大の矛盾は、朝日新聞が同じ紙面で報道した世論調査で、総選挙を「早く実施すべきだ」が33%で、「急ぐ必要はない」の57%を大きく下回っていることだ。福田康夫が辞任表明直後の調査では「早く」が56%、「急ぐ必要はない」が33%であり、逆転している。
NHKの調査でも、倍以上が「解散を急ぐな」である。社説はこうした世論の動向を無視しており、同じ紙面で正反対の記事を読む読者は“また裂きの刑”にあっているようなものだ。毎日も矛盾撞着が甚だしい。「解散を先送りすれば、国会が再び、機能不全に陥る可能性は大きいだろう。私たちは、これこそが、深刻な政治空白と考える」と主張するが、本末転倒だ。早期解散を獲得するためにあれだけ反対してきた給油法案を黙認しようとしてきた民主党のなりふり構わぬ政治姿勢が、国会正常化の背景にあることをとんと忘れている。機能不全は野党に責任があるのだ。「先送りした結果、経済の実態がますます悪化し、今以上に選挙どころではなくなる恐れもある」とも主張するが、社説子は空想や予言の次元で物を言うべきではない。
「急がば回れという。1カ月程度、衆院選の期間に使ったとしても、国民の信を得た政権が、この金融危機状況に対応することが、結果的に政治不況を招かない近道だ」と述べているが、これが一番問題の認識が浅い。「急がば回れ」をしている暇はないのだ。次々に緊急対策を打ち出していくべき時期である。判断を間違っている。それに自民党政権を変えたいという意識が、ぽろりとこぼれ落ちている。両紙の社説に共通していることは、連邦準備制度理事会前議長のアラン・グリーンスパンの発言「100年に1度の大津波」という事態認識を共有していないことだ。国内政局という低次元の見地に立って社説を書いている。両紙の“愛読者”としては国際的な視野に立った大局観のある論調を求めたいところだ。
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