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2008-10-23 00:00
“だまし討ち”成功?の麻生・国会対策
杉浦 正章
政治評論家
昔佐藤栄作首相の側近から「敵をだますのは、まず新聞記者から」という話を聞いたことがある。野党を政権の計略に引き込むには、まず新聞報道を利用せねばならぬということだ。最近の解散情報における政権与党側の情報操作も、ひょっとしたらそうかも知れないと思い始めた。麻生政権は解散情報について、断定的に解散期日を語る幹事長・細田博之と、白紙の状態を強調する麻生太郎自身に明らかに役割を分担している。そこにカギがあるような気がする。これまで新聞が書きまくった11月30日投開票説は、細田が情報の発生源である。近ごろはこれに国対委員長・大島理森も“参加”している。その狙いはどこにあるのだろうかといえば、国会対策である。
民主党は話し合い解散を持ちかけて以来、早期解散を実現するために国会戦術を急転換させてきた。それを定着させるために、自民党側から“呼び水”的に早期解散情報を流すわけである。その結果、補正予算は成立するは、給油のための新テロ特措法も近く成立するわである。味を占めた麻生は、金融危機をフルに活用して、今度は金融機能強化法改正案を閣議決定しようとしている。マスコミも野党もここに来て、だまされているかも知れない、とようやく気づき始めたようである。その証拠には、朝日新聞も読売新聞もあれだけ断定的に11月30日投票説を書きまくったのに、最近は鎮まった。軌道修正の余地を残しておくためにも、少し解散情報から遠のこうとしている編集操作が感じられる。野党も、ようやく民主党がこれに気づいた。国対委員長・山岡賢次も21日の幹部会では、「当面解散はないだろう」と発言している。だれも異論を挟まなかったという。これを受けて参院国対委員長・梁瀬進も、国会戦術を強硬路線に転換するかも知れないと発言している。
政府・与党にとって見れば、最重要法案であった給油法案を成立目前にまで持ってこれたわけであり、もし麻生が同法案成立後に本当に解散を先延ばしすれば、完全に“だまし討ち”に成功したことになる。細田の発言に乗った自民党担当記者のメンツは丸つぶれだ。麻生にしてみれば、自民党の調査で惨敗が確実の選挙を断行して、政権発足後最短距離で首相の座を離れるのは、嫌に決まっている。しかし本当に先延ばしするかどうかについては、麻生本人しか分からない。いまそれを当てることができるのは民間テレビの三流コメンテーターくらいしかあるまい。麻生の本心が分かるのは、おそらく給油法案が衆院本会議で再可決され、成立する10月30日以降であろう。
それにしても、政治記者の質が落ちた。このような政治状況の時は、昔の優秀な記者なら、自社の首相番の目を欺いて、首相の自宅を深夜訪れ、本心を聞いたものだが、そのようなすごみのある記事にとんとお目にかかっていない。周辺情報ばかりで、政局記事を書いている。朝日新聞も、解散で誤報させられた悔し紛れか、首相がホテルのバーで休憩する枝葉末節の行動にまで難癖をつけている。民放もこれに同調している。首相がホテルのバーくらい利用してもいいではないか。おまけに私費である。自分の会社の社長や役員が公費でホテルのバーを使わないだろうか。料亭を使わないか。首相の批判をする前に調べてみてはいかがかな。首相を批判するときは、リーダーシップの有無を見るべきだ。チャーチルの贅沢を英国民が批判したかである。
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