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2008-10-21 00:00
金融危機サミットにおける麻生の役割と責任は重い
杉浦 正章
政治評論家
金融危機サミットの主導権を日本が握れなかったと産経新聞が報じ、テレビ・メディアが「日本でやるべきだ。お株を奪われた」(報道ステーション)とこれに付和雷同しているが、事の本質を取り違えている。米国発の金融危機に一番影響を受けているのは欧州であり、米欧が主導権を握って対応を練るのは当然のことであり、日本が主導権を握らなければならないことでもあるまい。首相・麻生太郎が「成田でサミット」と最初に言い出した事は確かだが、米欧首脳も当然サミット開催を考えていて不思議はない。仏大統領・サルコジはそれを米大統領・ブッシュと直接会談して提案したのであり、成田で片手間にと軽く考えた方がもともと甘いのだ。日本が議長国なら議長国らしく、調整に乗り出せばよいのである。浅薄なナショナリズムと政権の足を引っ張る事を目的とした報道こそ慎むべきだ。
今回の金融危機の示すものは、金融機関の取引を野放しにして、地道な産業を軽視した米国の「市場万能主義」が招いたものであり、米国はいわば「第3次世界大戦」敗北に匹敵するダメージを受けたと言ってよい。世界を米国だけが圧倒的な政治・経済・軍事力でリードできる時代は終わったのだ。ベトナム敗戦以来の敗戦であり、ベトナム敗戦後と同じように米国の国力は相対的な衰退傾向をたどるだろう。日本は、北朝鮮の拉致問題に象徴される米国依存体質を早急に抜け出すべきだ。麻生も「大統領選挙で米国は政治空白になる。日本はその間、米国に次ぐナンバー2としての仕事をしたい。諸外国からもそう期待されている」と意欲満々だが、事は簡単ではない。議長国としての責任がこれほど重いサミットも珍しいからだ。
総じていえば、まず金融危機回避のための明確なメッセージが必要だ。金融機関の賭博のような取引を野放しにした米政府の責任は大きい。とりわけ諸悪の根源であり、「市場万能主義」の象徴である、ヘッジファンドへの規制強化も不可避の課題だ。これなくしてサミットが成功したとは言えまい。加えて金融機能が危機的な状況にある国に対しては、IMFの緊急融資などでまず対処すべきであろう。議長国としては、金融機関やヘッジファンドの規制強化に前向きな欧州と、消極的な米国の間に立つわけだから、その役割は困難を極めるし、大きいものがある。調整能力が試される。いずれにしても、サミットを単なる首脳の“決意表明”の場にしてはなるまい。市場は首脳らの一挙手一投足を見ている。サミットを開催した結果、市場の暴落に歯止めがかからなくなっては、元も子もないのである。その意味で調整役としての麻生の役割と責任は極めて重いとみるべきであろう。「主導権の掌握」などと言う低次元の発想などで対処できる問題ではない。
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