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2008-10-14 00:00
日本は拉致で独自外交を展開せよ
杉浦正章
政治評論家
米国が北朝鮮に対するテロ指定を解除したことで拉致問題へののテコを外した、と憤るべきではない。憤れば憤るほど、北朝鮮による日米分断の思うつぼに陥る。そもそも国家の安全保障にかかわる北の核問題と極東の一事件である拉致問題をはかりにかけること自体が無理なのであり、極東の安全保障という枠組みにおいて米国の判断はやむを得ないものであろう。拉致問題は日本独自の外交で解決への道を模索するしかない。それには「拉致進展なければ援助なし」の原点に立つことだ。まずは日本に期待される二十万トンの石油エネルギー支援などはとんでもないことと、はねつけることから始まる。
そもそもテロ指定解除は、昨年大統領ブッシュが国務長官ライスと同次官補ヒルの“提言”に完全に乗って、外交での「有終の美」を飾るために決断した問題である。その路線は、北との国交樹立まで見通すものだったが、さすがにレームダック政権となっては、そこまではやりきれなかったということだ。日本外交も、ヒルのペースに引っ張られどおしだった。拉致問題を冷厳な国際外交にはなじまない抽象的な“感情論”で訴え続けた事が、失敗の最大の原因だ。キッシンジャーが来日して「日本は拉致問題の進展、解決というが、その中身はなにか」と政府要人らに聞いて回ったが、答えられた者はいなかった、という事が物語っている。
テロ指定解除を受けた新聞論調は、産経新聞が「日米同盟や拉致問題に及ぼす影響が深く懸念される」と極めて批判的であるのに比較して、朝日、毎日、読売は比較的穏やかな反応だ。特に朝日新聞は「確かに、指定解除にあたってはもっと厳密で広範な検証の約束を取りつけるべきだったろうが、今回の合意でも核兵器材料のプルトニウム抽出の実態に迫ることはできる。このままでは、流れ全体が滞ってしまいかねなかった以上、米国の選択にはそれなりの意味があると考えたい」と 極東の安全保障の面からやむを得ないという論調だ。拉致問題のテコが失われたかどうかについても「これで手がかりを失ったと見るのは正しくあるまい。国交正常化や経済協力という強いカードがあるからだ。再調査をはじめ、誠実な対応をいよいよ強く迫らねばならない」と冷静に判断している。
それにしても、米国は明らかに「北」の瀬戸際外交に屈した形だが、近ごろのブッシュの顔をよく見ると、かってのきりりとした大統領らしさは消え失せ、ふが抜けたような表情だ。米国発の金融危機も肝心の米国の政策がふらついた結果、事態をこじらせ、深刻化させている構図だ。レームダックとはこういうものかと、改めて政権の栄枯盛衰に思いをはせるこのごろだが、1月の政権交代までにはまだ間があることが懸念材料だ。
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