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2008-10-03 00:00
麻生の“解散あとずさり”の真の理由
杉浦正章
政治評論家
総裁選挙で解散ムードをあおりにあおってきた首相・麻生太郎がここにきて、“前向き後ずさり”している。景気対策など懸案処理がある、というのがその理由である。しかし、表向きの理由で納得してはなるまい。裏がある。裏とは自民党が実施した調査だ。「自公惨敗」の構図が出て来たのである。解散の時期こそ口に出さなかったが、麻生は自民党総裁選挙で、民主党代表・小沢一郎との政治決戦を売り物にして、明らかに冒頭解散も辞さない勢いだった。29日の所信表明演説でも「わたしは逃げない」と踏み込んだ。しかし、小生がおかしいと感じたのは、30日夕刻4時半の発言。記者団が「補正予算案の成立後、衆院解散という日程か」と聞いたのに対して、「消費者庁の話も、テロ特措法の話もある。そういった問題をきちんと仕上げるというのは当然だ」と述べた点だ。
それまでは補正予算案処理だけを口にしていた麻生が、なぜハードルを2つも追加したかである。最大の理由は、自民党が9月22日から5日間秘密裏に実施した世論調査である。同調査は昨年の参院選挙前にも実施して、「自民党過半数割れの37議席」と読んで、ほぼ当てている。30万人を対象にしているから、マスコミの調査よりも精度はよい。調査結果は28日に出た。全国300の小選挙区を対象にしたものだが、その内容は、(1)自公合わせても過半数の241議席に達さない可能性がある、(2)自民党候補の半数が野党候補を下回る、(3)自民公明を合わせて優勢な選挙区は150選挙区、(4)比例代表での当選予想議席は自民党60人、(5)当落線上の議員が50~60人に上る、という内容だったようだ。
自民党は、5月下旬にも300小選挙区すべてではなく、50前後に絞って調査を実施しているが、現有305議席が190議席台になるという試算が出たといわれる。公明党の議席の30数議席を加えても、過半数に達さない状況である。これらの調査結果が物語るものは、小沢の倍の支持率がある「麻生効果」が、まだ「浸透」していないことを物語っている。恐らく麻生は、29日中か30日に調査結果を聞き、真っ青になって、“解散時期あいまい化”に転じたのであろう。ではいったんは固めた「10月21日公示→11月2日投開票」を、どこまで延ばすかである。たしかに麻生人気のさらなる浸透を図るために、金融危機対策にとどまらず、補正に加えた景気対策や後期高齢者医療制度改革の周知徹底などが必要だろう。しかし給油法案の処理までしていては、解散は来年になってしまう。
麻生人気がかえって落ち込む可能性もある。この場面は、さらなる麻生人気の浸透を図って、50~60人の当落線上議員の徹底的なてこ入れを図り、解散に踏み切って、与党で過半数にたどり着くしか策はあるまい。この点自民党幹事長・細田博之は2日「若干遅れる可能性は出てきた」と述べたが、年末から年始まで遅れるかどうかについては「そこまで与党間でもはっきりと議論していない」と述べている。細田の意識下には、大幅な引き延ばしはないようだ。恐らく麻生は当面、新聞各社の世論調査やさらなる独自調査の結果を見極めようということではないか。その間国会審議を通じて“麻生効果”の一般への浸透を図ってゆくのだろう。ただいったん離反した高齢者票などを取り戻すのは容易ではない。結局麻生人気を維持して浮動票を狙う“一か八かの戦術”しかないだろう。したがって、いつ解散があってもおかしくない状況は継続中である。
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