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2008-09-22 00:00
「サブプライムローン問題」三考
池尾愛子
早稲田大学教授・デューク大学客員研究員
先週のアメリカ金融市場の動きやその報道の様子をみていると、サブプライムローン問題から発生した金融危機問題が、ようやく解決の局面に到達したといえるようだ。つまり、水面下での調査・議論が真剣に行われていたことが窺え、水面の上に出して大胆に決着をつけるべき終盤が訪れているのである。先週の前半には大きなニュースが相次いだ。9月15日(月)には証券大手リーマン・ブラザーズが連邦破産法第11条の適用を申請、16日(火)朝には同メリル・リンチのバンク・オブ・アメリカによる買収が、同日午後には保険最大手AIG(アメリカン・インターナショナル・グループ)に対する緊急融資が、相次いで明らかにされた。7日(日)に政府系住宅金融機関のファニーメイとフレディマックが政府管理 "Conservatorship" 下におかれることが明らかになった後、イギリスで同様の問題をかかえる住宅融資最大手HBOS(Halifax Bank of Scotland)の経営問題が懸念されていた。しかし、16日(火)には大手銀行ロイズTSBによって買収される方針が明らかになり、アメリカでも注目された。
17日(水)午前から、あたかもこうした事態を予測していたかのように、ケーブルTV局CNBCが冷静に金融問題の特別番組を流していた。彼らのよく準備された報道や一部上院議員への生インタビューは、視聴者に対して的確な情報を提供し、冷静な行動を取らせるように作用したと思われる。AIGについては、ハリケーン被害に対する保険金も払わなくてはならないことが言及されていた。この特番の放送時間の最後のほうと思われる午後8時20-25分には、ポールソン財務長官、バーナンキ連銀議長、超党派の国会議員たちの会見が生放送され、この週末にかけて総合的な政策案を作成していくことが発表された。21日(日)朝には、ポールソン氏はTV局ABCのインタビュー番組に出演して政策案の梗概を語った。そのビデオは同局のウェブサイトにアップロードされている。ビデオでは何が論点となってきたかがよくわかるだろう(http://abcnews.go.com/ThisWeek/story?id=5850225&page=1)。例えば、借手救済の問題があるが、これは、国際協力の対象にはなりにくいであろう。
9月13日の本欄への私の投稿「サブプライムローン問題再考」の最後に書いたことと重なるが、アメリカの信用力の低い人たち向けの住宅ローン――しかも、毎月の返済ではなく、住宅を売って返済することをあてにしたローン――の資金も海外から調達していたのである。私は「しかし、地元にいる人たちに比べて遠方にいる人たちには、そのリスクと実態が見えにくいことが判明してきた」と書いた。正確にいえば、そんなことは当初から判っていた。距離はあっても市場参加者の間の公正な取引、彼らの信頼を支えることができなければ、市場経済、とくに金融市場は危機に陥るのである。今回の問題は、市場経済の根幹にかかわる信頼を揺るがしただけに、相当に深刻なものになったのである。
今週の後半には、大統領候補者たちの直接討論が予定されている。現在の当局者たちには、その前に、超党派で大筋の決着をつけたい様子が見える。この危機は、規制の少ないダイナミックなアメリカ金融市場の中で、一部の金融業者たちが犯した罪から発生し、透明性の低さが事態を悪化させたのであろうが、それにしても酷い。各国は、市場の信頼を揺るがしたアメリカ(の一部金融機関と規制当局)に対して怒りを冷静に表明し、これ以上事態を悪化させないために、市場規律(market discipline)を損なわない範囲で協力するしかないのであろう。アメリカ・メディアの報道から日本政府筋の発言を正確に捉えることは難しいが、積極的な改善勧告は引き続き期待したいと思う。
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