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2008-09-22 00:00
“舛添クーデター”は猟官運動そのもの
杉浦正章
政治評論家
首相になる麻生太郎が後期高齢者医療制度の抜本改正を、筆者のかねてからの予想通りに打ち出した。小沢一郎が反発しているが、反発すればするほど、突然の攻撃材料喪失に愕然としている事が分かる。麻生の選挙戦略のポイントになる大方針転換だが、背景には厚労相・舛添要一の福田内閣に対する“クーデター”とも言える猟官運動の動きが水面下であった。舛添の用意周到さは驚くほどのものがある。まず舛添が大転換構想を明らかにしたのは20日であり、もう24日の政権交代で責任問題に発展する時間的余裕がない時点を選んだ。そうして21日には、民放番組に恐らく自ら申し出て急きょ出演し、その構想の内容を述べた。年齢のみで対象者を区分せず、年金からの保険料天引きを強制しない、という事実上の制度廃止、新制度導入を首相・福田康夫、官房長官・町村信孝にも相談しないままである。
舛添は、首相に相談しなくても、“次期首相”の麻生にはちゃっかりと事前に相談していた。臨時国会における所信表明演説に盛り込むという段取りまで綿密に打ち合わせていたのである。麻生も、これを裏付けるように、21日NHKで「抜本的見直しをする」と言い切った。麻生にしてみれば、後期高齢者医療制度は、野党が廃止法案を提出している以上、総選挙に敗れればどっちみち廃止になる制度である。自民党の選挙対策にとっても、制度の事実上の廃止は不可欠と言ってもよい選挙戦略であったのだ。
抜本改正が行われること自体は、同制度はもともと厚労省官僚の手のひらの上で踊らされた大失政であり、歓迎すべき事だろう。しかし、舛添の行動はあまりにも猟官運動が見え見えであり、与党内には「不快感を生じさせる」(自民党幹部)という声が生じている。抜本改正を言うならば、内閣の方針と自らの国会答弁に真っ向から反することであり、辞任してから発言すべき事であろう。必死に国会答弁で制度擁護を主張してきた首相のはしごを最後になって外した、としか言いようのない行動である。根回しなしで置いてけぼりを食らった与党側も不愉快きわまりないところであろう。公明党政調会長・山口那津男が「政調会長の自分も知らなかった」と、不快感をあらわにしたのも無理からぬことであろう。
当然ながら、内閣の方針に反する言動を閣僚がする場合には、首相の了承のもとで事前に閣議にはかって、閣議決定の上行うのが筋であり、常識である。総辞職ぎりぎりの段階で福田は、舛添を罷免するわけにも行かないだろうが、けじめを付けるには時間がない。福田は自民党のためを思ってうやむやにするのだろうか。舛添の思惑通りだ。政権も落日の段階に入ると、こういう事件が起きる。信義を踏みにじられた福田の“歯ぎしり“は格別のものがあろう。それにしても舛添の行動には見え見えの裏がありすぎる。改造に当たって麻生はこうした舛添を厚労相に留任させるだろうか。恐らく舛添留任なら、国会答弁に本人が行きづまるだろう。改造人事のもっとも見どころの場面が一つできあがった。
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