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2008-09-04 00:00
中国の出方のさまざまな可能性を予期せよ
小笠原高雪
山梨学院大学教授
最近私は、中国の外交関係者から「東アジア協力はいうまでもなく大切であるが、アジア太平洋協力もまたそれに劣らず重要である。APECが停滞気味になっているのは、加盟国が増えすぎたことに一因がある。そこで、米国、中国、日本、韓国、豪州、インドネシアといった主要国のあいだで新たな枠組をつくることも、検討に価すると思う」という話を聞いた。
これは公式の会議が終った後の、雑談のなかの一節である。したがって、この発言ひとつをもって中国の政策を云々するのが早計なことは、論を俟たない。ただ、数年前に東アジア協力の枠組が問題になった際には、中国はそれを「ASEAN+3に限るべし」との立場であったと伝えられているだけに、豪州のみか米国をも加えた「新たな枠組」の可能性が中国の関係者から語られたことは、いささか意外に思われた。
しかし、よく考えてみれば、これはそれほど意外なことではないのかもしれない。この関係者は「ドーハ・ラウンドが失敗に終った」ことに対する強い憂慮の念を表明していた。「ドーハ・ラウンドが失敗に終った」ことが事実とすれば、それは米国との経済関係をますます深めつつある中国にとって、確かに憂慮すべきことであろう。私はドーハ・ラウンドが停滞している理由を正確に承知しないが、それが中国側に対米関係の重要性を再認識させる一つの契機になったとすれば、興味深いことである。
上述のように、一関係者の雑談中の発言をもって中国の政策を云々するのは、明らかに早計である。しかし、国際関係においてはさまざまなことが起こりうるし、中国外交はこれまでも、ときに大胆な動きをみせてきた。そのように考えるならば、米国との経済関係をますます深めつつある中国が、APECに代替しうるような新たなアジア太平洋協力の枠組を提案してくる可能性も、決してありえないとはいえない。
もしそうであるならば、わが国としても、東アジア協力とは別に、アジア太平洋協力に対する考え方を整理しておくことが必要であるかもしれない。そして、その場合には、APECに替わる新たな枠組に賛同するのか否か、賛同するとしたらAPECで限定的なメンバーシップを与えられている台湾の扱いをどうするのか、多くの地域協力においてASEANの主導性を支持してきた従来の立場との整合性をどう確保するのか、などの論点が重要になるであろう。
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