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2008-08-21 00:00
首相に「給油」テーマの解散ができるか
杉浦正章
世評論家
自民党幹部から、新テロ対策特別措置法改正案をテーマに解散すべきだという発言が出始めた。総選挙のテーマは、後期高齢者医療制度をはじめ自民党に不利なものだけが山積しているが、首相・福田康夫が国民世論が割れる「給油」をテーマに解散した場合、20日に全国紙の多くが社説でその必要を強調したように、意外とプラス局面が生ずるかもしれない。問題は福田がその荒技をやりきれるかどうかだ。
新テロ特措法案については、民主党の反対ばかりでなく公明党の消極姿勢と併せて自民党執行部の腰が引けており、同法案は“風前の灯”の状況となっている。この状況に関連して全国紙が20日一斉に社説を掲載した。読売、日経、産経の各紙はいずれも国際貢献の立場から臨時国会で同法案を成立させ、1月15日以降も給油活動を継続すべきだとの論調である。読売は、衆院における3分の2の再可決についても「憲法の定める正当かつ民主的な手続きである。国民への丁寧な説明は必要だろうが、躊躇(ちゅうちょ)する理由はない」と主張している。今回は触れていないが、過去の論調から見て産経と日経も3分の2条項による可決は止むなしという態度だ。
絶対反対の民主党はともかくとして、公明党に対する論調も3紙は概して批判的で、読売は「公明党は昨年、給油活動の継続の重要性を強く主張していた。その重要性は今、減じるどころか、一段と増している」と同党の姿勢の矛盾を突いている。臨時国会で与野党の話し合いがつかない場合の対応についても、民意に委ねるべきだとする論調が出てきた。日経は「与野党の話し合いがつかなければ、衆院を解散して民意を問うくらいの覚悟が政府与党には必要だろう」。東京も「論戦で対立点を明らかにした上で総選挙に臨めばいい」との立場だ。
こうした全国紙の反応の中で、自民党元幹事長の中川秀直は、19日「民主党が法案成立に反対するなら、日本が国際貢献をする国家でいくか、テロに屈服する国家でいくか福田首相の手で堂々と民意に問わなければならない」と発言した。総選挙のテーマはこれまで後期高齢者医療制度、消えた年金、物価高騰の3大マイナス要因ばかりが目立っており、このままでは散々たる結果が予想される。しかしマスコミをリードする新聞論調の大勢が「給油継続」論であることは、中川発言も急所を突いていることになる。少なくとも「給油」をテーマとすることで、国民の選択肢が3大マイナス要因からそれる事になるのである。
財界も給油ルート確保の立場からテロ法案に賛成の立場である。自民党執行部のように新テロ特措法案から腰が引けていれば、自民党支持層の核である「外交安保」票を失う恐れがあるが、同法案を何としてでも成立させるという基本姿勢が見えれば、問題は別である。しかし、国民の目をテロ特措法に集め、その必要性を説得し、国会の流れを同法審議に集中させ、その上での解散というテーマは、いまの政府・与党ではまさに針の穴にらくだを通すほど難しい。福田のリーダーシップに疑問がある上に、公明党に秋波を送る自民党執行部ではいささか荷が重いかもしれない。
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