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2008-08-19 00:00
注目される古賀誠の後期高齢者医療制度「凍結」論
杉浦正章
政治評論家
総選挙に勝つには「政策の大転換しかない」(山崎拓・自民党前副総裁)と言う声が、自民党内にほうはいとして起こっている。夏休みで選挙区に帰った議員らがあまりの自民党不人気に愕然としているのだ。しかし、その大転換ができるだろうか。景気対策でばらまき型補正予算を組んでも効果は限定的とみる。ただ一つあるのが、核心の後期高齢者医療制度の凍結だ。これができれば民主党とほぼ対等で戦えるが、官僚基盤の上に立った首相・福田康夫にまずその勇気はないだろう。
オリンピックの影に隠れたが、17日の民放番組で自民党選挙対策委員長の古賀誠が注目すべき発言をした。後期高齢者医療制度の凍結論である。古賀は「後期高齢者医療制度を凍結するくらいの大胆な事が必要だ。それくらいの勇気と決断が必要だ。すべての分野で改革を凍結し、税制の抜本的検討と併せて弱者に優しい政治ができるか、という工程表を作るべきだ」と述べた。古賀は去る6月にも同様に「安心感、信頼感のある制度に改善すべきだと議論している間は、後期高齢者医療制度を凍結するぐらいの勇気があってもいい」との発言をしているから、まさに確信的な凍結論だ。
しかし、6月の時点とは状況が異なる。それは後期高齢者医療制度に自民党が修正の手を加えて、「7割の負担が安くなる」方向を打ち出した後であるからだ。古賀の再度の発言は自民党による修正の効果がなかったことを意味する。つまり民主党などが訴える「廃止」と、自民党の「修正」では、修正が負けているのである。たしかに高齢者の多くが「今度だけは自民党以外に投票する」で凝り固まってしまっているのが選挙区での実情と言われている。古賀は選挙対策委員長として地方を回り、有権者の反発を肌身で感じ取ったうえでの発言である。弥縫策(びほうさく)では状況を打開できない、というのが古賀の実感だろう。
いったん法制化して施行したものを凍結するということになれば、政府・与党にとってその存否が問われる問題であるが、誤りと認めたら憶面もなく正してきたのも、自民党政治だ。第一、後期高齢者医療制度のおかげで政権を失っては、元も子もなくなるのである。民主党に政権が渡れば躊躇なく廃止される。先の見える、度胸のある政治家なら、ここはいったん「凍結」して新制度を打ち出すだろうが、福田首相では無理かもしれない。幹事長・麻生太郎も含めて自民党執行部が「凍結」で一致すれば、別の展開もあり得るだろうが。
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