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2008-08-15 00:00
(連載)世界は新冷戦期に逆戻りするのか(2)
伊藤 憲一
グローバル・フォーラム執行世話人
ところで、欧州連合(EU)の対応だが、議長国フランスを代表して調停に当たったサルコジ大統領の果たした役割は、6項目合意を取り付けたことであったが、この合意については、「ロシアのグルジア侵攻を止めるのではなく、むしろそれを許容した」として、否定的に評価する声が強い。ロシアの要求に従って「追加的安全保障措置」(ロシア軍に平和維持部隊として南オセチア、アブハジアの係争地域以外でも行動する余地を認める)をグルジアに押し付けたというのである。独仏伊3国の対露弱腰の背景には、その天然ガス輸入量の3分の1をロシアに依存しているという弱みがあるとも指摘されている。
ロシアの戦略的な狙いは、最終的にグルジアに傀儡政権(ロシア版「満州国」)を樹立することであろう。まずは南オセチア、アブハジアを独立させ、つぎにグルジアの政権転覆を図るということであろう。グルジアは、コーカサス、中央アジアがヨーロッパに出る出口を扼しており、ここがロシアの手中に落ちれば、コーカサス、中央アジアの石油・天然ガスは、ロシアを経由する以外に外部世界への輸出が不可能となる。
問題は、もちろん米国、そして独仏伊はそれを許容するのか、ということである。かつてこれら諸国(そして日本)はロシアがチェチェン民族を袋叩きにするのを座視したが、もし今またグルジアについて同じことを許すならば、それこそが世界を新冷戦期に逆戻りさせるであろう。いまのロシアはまだ、びくびくと、そしておどおどと行動しているが、1968年には、米国のジョンソン大統領がベトナム戦争の泥沼のなかで立ち往生している虚を突いて、戦車をチェコの首都プラハに侵入させ、チェコのドプチェク党第一書記を追放した。このあとブレジネフ・ドクトリン(制限主権論)が確立し、その後の20年間にわたる鉄の東欧支配のレールが敷かれた。それにしても成長しない国だと思うが、ロシアは40年後の今日でも第2の「プラハの春」が再現可能だと思っているようである。まして、世界のエネルギー資源を自国の兵器庫に収めたとの確信をもてば、そのあとは、もはや態度を一変させるであろう。西側先進民主主義諸国(日本もその一国のはず)は、その価値観を掲げた国際秩序の擁護のために、今こそ決然たる行動に出るべきである。21世紀世界は、2度の世界大戦を経験した20世紀世界と同じではないことを、われわれは言葉によってではなく、行動によって示さなければならない。いまロシアは、われわれの意志を試しているのである。(おわり)
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