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2008-08-05 00:00
「民族の誇り」を拉致されて長期放置する長期政権
岩國哲人
衆議院議員
北東アジアにおける日本の外交に、戦略らしいものはあるのか。6か国協議の核、拉致をめぐって、怒りがふつふつとこみあげてくるのは、私だけではないだろう。かつて、米国のイラク攻撃に備えての外交方針を質問され、川口外相が「今は何も言わないのが日本の国益」と答えて、失笑を買ったことがある。世界はしかし、自ら判断し、発言し、行動しようとしない日本に安心しているのも、否定できない事実である。発言せず、請求書が来たら、これまた黙々と支払う。そういう理想的な劣等生であり、理想的なミツグ君である日本に、世界の国々は内心満足しているのだ。そのような国こそ世界が必要とする国だからである。劣等生のふりをし続けることが、わが国の国益にかなうという外務大臣の発言は、「民族の誇り」を忘れられるならば、たしかに一つの考えかもしれない。
しかし、「民族の誇り」を大切にするならば、カネにモノを言わせる外交から、クチにモノを言わせる外交に転換すべきではないか。人類史上最初の大量破壊兵器の被害国となったのは、アメリカでも、ヨーロッパでも、アフリカでもない。それは、アジアであり、日本である。その日本が北朝鮮に対して核兵器の恐ろしさと愚かさを訴えることは、そんなに難しいことだろうか。
広島・長崎の原爆の日を前にして、愚かな選択に固執する北朝鮮に直接、あるいは米・中・露の安保理3国を利用して間接的な圧力を加えることができるのは、日本だけが使える外交上の特権ではないのか。北方領土を占領措置されて63年、竹島を占有拉致されて56年、日本国民を拉致されて30年。これほど長期間にわたり、長期政権によって、長期放置され、未解決のまま今日を迎えているのは、単なる怠惰や無責任では説明できない。北朝鮮がテロ国家指定取消しにこだわるように、わが国にもこだわらなければならないものがある。
「テロ支援国家」どころか、日本は国連から「旧敵国」と指定されて63年。国連加盟後も「旧敵国」呼ばわりをされ続けながら、加盟以来52年間に7000億円の分担金を支払ってきた。本部が置かれていて雇用や消費で支払い金以上に見返りがあるアメリカが最大の25%を分担するのは分かるが、見返りのない日本が露・中・独の三大経済国合計13%を上回る17%を負担している。そして、なお「旧敵国」という汚名条項をいまだに抹消してもらえないのはなぜか。日本は、あといくら支払えば「旧敵国指定」を取り消してもらえるのか。「国の誇り」までが拉致されている現状を、政府や外交官は気にならないのか。
北朝鮮の「テロ支援国家」指定解除が確定する8月11日が、1日1日と近づいている。指定解除が実現すれば、わが国が実施中の経済制裁の効果はなくなり、拉致解決のための「対話と圧力」の「圧力」という選択肢が事実上消える。日本の拉致解決が置きざりにされるなら、米国を「拉致支援国家」に指定しなければならない。6年前、日朝接近を警戒する米国の協力なきままに、小泉総理は決断し、平壌宣言という対話の道を少くともいったんは開いている。拉致解決は、自らの手でと公約した福田さん。成果がなくとも恐れることはない。残るわずか1週間、総理は訪朝を決意すべきである。支持率がこれ以上は下がることがないというのも、考えてみれば強運ではないか。
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