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2008-07-18 00:00
アメリカのサブプライムローン問題
池尾愛子
早稲田大学教授・デューク大学客員研究員
7月12日(土)の朝8時のラジオ(ノースカロライナ・パブリックラジオ、NCPR)の全国版(NPR)のパートで、その週末、カリフォルニアに本拠をおくインディマック(IndyMac Bank)のATMとデビット・カード・ネットワークが使えなくなるけれど、月曜日には同銀行は国有化・国営化されて再出発する、というニュースが要点のみ簡潔に告げられた。確かに前日の金曜日にはアメリカの銀行経営の問題が大きく取りざたされていた。
その土日には、CNN全国版がテレビ局の中でいちばん詳しく、インディマックの事態を報じていた。詳しく取材をしていたようだ。シューマー上院議員が、インディマックの経営悪化が納税者と借り手に重大なリスクを課すことを憂慮する、という内容の6月26日付公開書簡を貯蓄金融機関監督庁(OTS)と連邦預金保険会社(FDIC)に送っていたのである。CNNによれば、インディマックは、審査なしで住宅ローンを融資していた。住宅価格は高騰するので、住宅を売却してローンを返済すればよい、と考えたのである。しかし、住宅価格は予想したほど上がらなくなったばかりか、バブルがはじけて下落したのである(5月28日の本欄に書いたように、このような融資は本来すべきではないのである)。
14日(月)には、サブプライムローンの新しい貸出しルールが発表された。貸手は、借手の所得や資産を審査して返済が可能なことを確認することが必要になったのである。私の感想としては、これでようやくアメリカの金融問題の傷口の拡がりにストップがかかったと思う。シューマー上院議員はOTSによって非難されているようだが、少なくとも経済学者や日本の金融関係者の感覚からすれば、正義感のある行動をとったといってよいと思う。
同日朝8時のNPRでは、インディマックの総資産はたった320億ドルで、政府系金融機関(Government sponsored enterprises)のファニーメイとフレディマックの総資産は5兆ドル(ほぼ日本のGDP)もあり、その規模は全く違うと報道された。深淵を見たら、落ち着くしかないでしょ、とたしなめられている気分もした。もちろん、その総資産は、貸出債権や関連証券で、借手が予定通り利子を払いながら元金を返済している限りは、優良資産である。
傷口の拡がりは止まっただろう。しかし、1-2年後に住宅を売却することを前提でローンを組ませるとき、貸手はどのように借手を説得したのだろうか。さらに、こうした債権を証券化し、市場に売却した金融機関は、どのように情報を処理したのか、格付けはどのようになされたのか。情報撹乱(misinformation)、詐欺、欺瞞という表現も出てくるのだろうか。公正さを欠く取引は、信頼に基礎をおく市場の機能を損なうだけに、徹底した調査と情報公開、そして金融慣行の変更が求められているように思う。
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