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2008-07-06 00:00
(連載)国際経済学会世界大会からの報告(1)
池尾愛子
早稲田大学教授・デューク大学客員研究員
国際経済学会(International Economic Association、IEA)の第15回世界大会が6月25-29日に、米コロンビア大学のカルヴォIEA会長とトルコ経済学会のウイグル会長の共同組織の下、イスタンブールで開催された。全体テーマは「グローバル化の挑戦」で、国際金融に関するセッションや講演がいくつかあったので、その一部を紹介して感想を述べておきたい。第1は、アメリカ発のサブプライム・ローン問題の世界的拡散状況についてである。最初の2日間は、この問題に言及する人が多く、その結果多くの経済先進国にはその悪影響が伝染病のように広がったものの、途上国はその影響から隔離されており、被害報告は上がってきていないこと、そしてトルコではその影響が(ほとんど)見られないことがわかった。ただ、トルコの経済学者たちはトルコを途上国と位置づけようとしたが、同国は先進国が集まる経済協力開発機構(OECD)の一員であることは記しておく。
第2に、大会前にコロンビア大学を中心にアメリカの経済学者たちが意見交換をする機会があったことが窺え、国際金融と各国内の経済データに基づいた現状認識について、ある程度の合意が形成されており、現下の国際金融制度に対して共通した危機感が表明された。周知のように、中国など東アジア諸国は、経常収支黒字を重ねて外貨準備(米ドル中心)を蓄積している事実がある。今回は、アメリカで各国の経済データを吟味したところ、外貨準備とM2(銀行預金と銀行部門以外で流通する現金の合計)の間に強い相関関係があると報告された。例えば、中国は外貨準備もM2も多いのである。「マネタリストの診断は、時代遅れであろう」という話術の煙幕を払いのけると、外貨準備の多い国ではインフレ・リスクが潜伏していることが、暗に示唆されたと言ってよい。
それでも、大会直前に発表された中国国内でのガソリンなどエネルギー価格の引上げ政策を歓迎する声は相次いだ。東アジア側からいえば、1997年の通貨危機に際して国際通貨基金(IMF)介入を甘受した国々の苦い経験を見て、こうした事態を回避すべくいくらかの外貨準備を蓄える途を選んでいる側面がある。アメリカの経済学者たちは、東アジアが各国でこうした「自己保険」をかけていることが、前例のないグローバル不均衡をもたらしており、国際金融の不安定性の引き金要因になりかねないとの見方を示した。一国の通貨が国際通貨の役割も担うという「トリフィンのジレンマ」が今も続いている、という共通認識もあった。(つづく)
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