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2008-07-04 00:00
内閣改造で割れるメディアの判断
杉浦正章
政治評論家
あいまいな傾向のある政治家の発言が何を意味するのかの判断は、政治記者の能力が問われるところがある。見出しを付けるデスクも腕の見せ所である。元首相・小泉純一郎が内閣改造に関して「難しい」と述べたことに関して、メディアの判断が、肯定的に受け取る見方と否定的に取る見方に割れた。どっちが正しいかは首相・福田康夫のみが知るところである。3日の小泉発言は「想像するに内閣改造は難しいです。いまの閣僚はよくやっていますから。しかし自前の人選ではない点も、(首相は)気にしているでしょう。改造をした場合に新しい閣僚が国民から支持されるかどうか。内閣改造をした場合には、自分の手で解散すると思う人が多くなる」というものだ。
これを肯定的に受け取ったのは朝日新聞。見出しに「改造・解散総理決断を、小泉氏」と取って「内閣改造と解散・総選挙について決断を促した」とコメントした。朝日は、サミット後に改造の可能性があるとの判断で一貫した紙面を作っており、その流れに沿うニュース処理である。一方毎日新聞は「内閣改造は難しい」という見出しで全く逆の判断を示した。その上でコメントも「改造は困難との見方を示し」と完全否定した。NHKも否定的に受け取っており、発言へのコメントは「近いうちに改造は行われないのではないかという見方を示しました」とした。
一方、産経新聞は「内閣改造に慎重論」と見出しを取るにとどめた。日経新聞は、見出しを「福田首相、自らの手で解散を。小泉元首相が講演」として、あいまいな改造問題での見出しの判断を避けた。しかしコメントは、「改造に踏み切るかどうかの判断は難しいとの認識を示した」とした。この日経の「判断は難しい」という分析、対応が一番適切であるような気がする。確かに小泉は判断が「難しい」と言いたいのであって、改造を「する」「しない」には踏み込んではいないのだろう。小泉が「衆院議員の任期はあと1年しかないので、首相が改造したら、自分の手で解散すると思う人が多くなる」との見方を述べたことが、それを物語っている。
小泉は「首相の最大の力の源泉は、解散権と人事権だ。これで失敗したら退陣しかない」とも述べている。これはこのところ組閣や改造するたびに閣僚の不祥事が頻発して歴代政権が追い込まれていることを考慮し、閣僚の選考に十分考慮を払う必要があることを忠告したと受け取れる。全体のコンテクストをみた場合、発言を単純に改造否定とみるのはどうかと思う。むしろ改造して時期をみて解散する方法があるとしながらも、それは自己責任でやるべきだと言った、という判断が正解だろう。失敗すれば首が飛びかねない政治状況だと言いたいのだろう。その意味で朝日の処理が当を得ているといえる。いずれにせよ改造は福田の胸先三寸にある。しかし政治的状況からみれば、改造しなければじり貧傾向が続き、政治的な賭になるが、改造に成功すれば政権浮揚効果も生ずるだろう。
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