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2008-06-27 00:00
再説「中国主張の大陸棚は根拠がないことを報道せよ」
湯下博之
杏林大学客員教授
私はさる1月29日に本欄に「中国主張の大陸棚論は根拠がないことを報道せよ」と題して投稿し、その後同様の趣旨を6月5日付けの読売新聞「論点」欄にも「日中海洋境界線:世論に説明を」と題して寄稿した。何人かの方から「全く同感だ。国際法の専門家レベルで中国の専門家たちに注意喚起できないだろうか」「もし、あなたの言うとおりなのならば、何故、日本の政府・外務省はそれを主張し説明しないのか理解に苦しむ」などの声を頂いた。さっそく外務省に照会したところ「あなたの言うとおりであり、日本政府は中国側に対してそのように主張している」とのことであった。
その後、6月18日に、東シナ海のガス田開発に関する日中政府間合意が発表された。報道によれば、その要点は、白樺ガス田(中国名・春暁)開発への日本の参加、翌檜(同・龍井)南側の日中中間線をまたぐ海域での共同開発区域設定が柱で、境界画定についての議論は先送りというものである。5年越しの懸案が一応円満な解決を見たことは喜ばしく、まさに「戦略的互恵関係」の具体化とも言えよう。関係者の努力を高く評価したい。また、合意の対象海域が日中中間線の周辺であり、沖縄トラフの影響が見られないことも、本当は当然のこととは言え、評価されてよいであろう。
この点に関し、両国は今後、合意内容を具体化する条約締結の交渉をするが、中国国内には、ネット上で今回の合意に対する批判が相次いでおり、条約案がすんなりとまとまるか保証はないとの報道もあった。批判の詳細は承知しないが、中国側が譲り過ぎという主張が含まれているらしく、沖縄トラフ境界線論との関連性が気になる。また、日本のテレビ討論番組の中で、日本の識者が「中国側は沖縄トラフ論を容易には取り下げないだろう」と淡々と述べて、それが現在の国際法に反し、許し難いものであることに言及しないのを耳にして、驚いた。国連海洋法条約により排他的経済水域の制度が創設された結果、それ以前には認められた大陸棚の自然延長論が、向かい合う二国間の境界画定には通用されなくなっているという事実を、先ず日本の識者に、ついで中国の軍当局・世論などに知ってもらうことが、日中間の懸案の円満な解決にとって不可欠であると思う。(編集部注:中国は、トンキン湾における石油開発に関連したベトナムとの海洋境界線画定交渉では、ベトナム側の大陸棚自然延長論を排し、国際司法裁判所の判例を根拠にする中越沿岸中間線論を押し通している)。
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