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2008-06-23 00:00
秋以降はいつか解散総選挙があってもおかしくない状況だ
杉浦正章
政治評論家
自らを励ますように「解散はない」と言って、海外旅行に出かける自民党議員が多いようだが、甘い。政権もここまで追い込まれた状況になると、首相・福田康夫の意思にかかわらず、解散しか事態打開の道がなくなる場合があるのだ。臨時国会末の11月から1月にかけての3ヶ月間に解散は7対3の比率である方に賭ける。解散恐怖症候群とも言うべき症状に陥った自民党幹部から、「民主党が選挙をしたいときに解散するほど、福田康夫首相はお人よしではない」( 元幹事長・中川秀直)と言った発言が相次いでいる。これらの発言は政局の“読み”ではなくて、“期待”である。政局を読んでいるのは民主党代表・小沢一郎であろう。小沢は「政府・自民党の思惑とは別に、近くなるのではないか」と述べ、年内または年明けの解散を予言している。
さすがに自民党幹事長・伊吹文明だけは、解散がないとは言っていない。逆に「常在戦場」を強調しているし、前参院議員会長・青木幹雄も「何があってもおかしくない」と「秋の解散」と読んでいる。何が理由かといえば、選挙資金の問題がある。そもそも小沢が秋の解散と断言するのは、秋に向けて選挙資金を投入するという宣言にほかならない。同じ選挙区で戦う自公議員は、解散恐怖症候群の発言を真に受けて選挙活動をしないだろうか。やはり資金を投入せざるを得なくなるのが実情だ。夏からだから長丁場の消耗戦となる。そうすると与野党とも資金が枯渇して、「もうどうなってもいい。解散してくれ」となるのが代議士心理なのである。
臨時国会の審議も通常国会以上に難問山積である。継続審議となった後期高齢者医療制度廃止法案、自衛隊給油派遣のテロ特措法案、待ったなしの基礎年金国庫負担引き上げ、と解散のテーマには事欠かない。加えて首相自らが宣言した「消費税決断」論議である。世論の動向はどうか。三大紙の社説のうち、読売だけが「任期が切れる来年9月までには総選挙がある」との認識だが、朝日は「民意を問う日に備えよ」、毎日は「各党は選挙公約作りを急げ」と、間接的ながら早期解散を主張している。朝日、毎日ともに臨時国会が行きづまった時点で、「首相は、解散で民意を問え」と変わるのは確実だ。民放ニュース番組も、秋以降解散ムードを高める方向だろう。
加えて、任期満了選挙には戦略上の重大な欠陥がある。憲政史上三木武夫だけが任期満了選挙を断行して、大敗している。それも田中角栄に解散権を封じられ、任期満了に追い込まれたのである。解散は「天の時、地の利」を見極めて、攻撃的に仕掛ける最大の政権維持戦略である。任期満了で野党に追い込まれる選挙は愚の骨頂であろう。半年待って衆院300議席が維持できるか。“被害”はもっと大きくなるだろう。こういう状況からみて、秋以降はいつ解散総選挙があってもおかしくない状況で推移することが確実だ。首相のいう「消費税」をテーマとすれば、国民総反対の「後期高齢者医療制度」をテーマに解散するよりは、負けの歩留まりを少なくするかもしれない。まさに寸前暗黒、常在戦場で政局は推移するだろう。
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