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2008-06-19 00:00
「ねじれ」の奏功が目立った通常国会
杉浦正章
政治評論家
6月21日で「衆参ねじれ通常国会」が閉幕するが、総括すれば意外に“ねじれの奏功”が目立つ傾向を見せた。民主党の“現状打ち壊し”型攻勢に、長期自民党政権がもたらした国政のマンネリ化と停滞が刺激を受け、むしろ活性化された部分が顕著だ。明らかに政権与党は追い詰められたが、逆に民主党の政権担当能力の危うさが白日の下に露呈されたことも事実だ。
政治家より革命家ではないかと思われるほど、民主党代表・小沢一郎は“攻め”と“破壊”に徹していた。首相・福田康夫は防戦一方の印象を与え、支持率も低迷、「ポスト福田」がささやかれるまでに打ちのめされた。民主党がポピュリズムの確信犯なら、与党は官僚主導型政権の弱点をさらけ出した。民主党の横やり路線の象徴的なものは、臨時国会ではテロ特措法案絶対反対、通常国会ではガソリン税問題、日銀総裁人事であるが、新聞論調は総じて民主党のやり方にネガティブな反応を見せた。責任政党として政権を託されるかどうかに疑問を呈したのである。
しかし、民主党の「隠ぺい暴露戦術」は、官僚主導型政権の弱点を突いて、大向こうをうならせる効果をもたらした。「消えた年金」に始まって、防衛次官汚職、道路財源の無駄遣い、後期高齢者医療制度の背景暴露など、いずれも政権を直撃した。最後にとどめを刺したのは「居酒屋タクシー」である。すべてが長期自民党政権を支えてきた官僚主導型政治の欠陥を突くものであった。よくこれほどまでに日本の官僚制度が落ちぶれたかと、国民に思わせるものがあった。首相をして道路財源の一般財源化に踏み切らせたのも暴露戦術の効用であった。追及の最たるものが、後期高齢者医療制度廃止法案だが、現状の改善策では与党は総選挙で政権を失いかねないところまで、追い込まれている。
もっともこの“ねじれ”を最大限利用した民主党の憶面もない大衆迎合型政治の弱点も露呈された。対案なしの揚げ足取り型追及である。テロ特措法、ガソリン税問題、後期高齢者医療制度問題のいずれをとっても、対案なしの何でも反対路線を突っ走った。かっての社会党と何ら変わるところのない対応だ。その根底にある財源問題は、選挙を意識してあえて国民の反発を買う増税問題にふたをしたまま、「節約」でやり通すという虚構であり、これを露呈させた。まさに政権政党として責任ある対応にほど遠い路線である。
こうして通常国会は“ねじれ”をどうするかという最大の政治課題に、与野党対決のみが目立って閉幕する。不毛の状態が一通常国会にとどまればよいが、総選挙を前にした政治状況は臨時国会までもつれ込むことを避けられなくしている。内政の泥沼に足をとられた日本の政治は、国政の停滞、ひいては国力の低下へとつながりかねない危険な側面を持つ。早期に総選挙で決着を付けるべき段階に来ているのだろう。
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