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2008-06-18 00:00
馬英九台湾新総統の直面する政治課題
木暮正義
元東洋大学教授
北東アジアを覆っていた劇場型のポピュリズムの政治は、ワン・フレーズ政治の小泉首相の退陣に次いで、韓国の大統領選挙を経て、台湾の総統選挙を以って沈静化し、より現実主義的な利益政治(interest politics)の局面に入った。イデオロギー的な「台独・正名」の陳水扁総統の8年間のアイデンティティ政治(identity politics)も、「与小野大」の立法院と解散権の無い「半大統領制(semi-presidentialism)」のインモビリズムの政治に苦しんだが、遂に現実主義路線の馬英九新総統の利益政治の出現で幕を閉じた。
「国民党」発のインモビリズムの政治と黒金政治から脱出する有力な方途として「民進党」が選択した選挙法の改正は、恐らく2004年の立法院選挙における「民進党」の得票率39.6%、「国民党」の得票率35.1%を前提とする選挙勝利の「自己充足の予言」の筈であった。しかし立法委員会の半数減員とゲリマンダー的選挙区設定を含む妥協の選挙制度は、小選挙区固有のマイナスの激変効果を国民の審判として「民進党」にもたらした。選挙法改正にかけた「民進党」の楽観的な政治算術は逆に「自己否定の予言」を結実した。「民進党」27議席に対して81席のヘゲモニー政党としての「国民党」が出現した。
この「一党独大」の政治状況の出現に対して、総統選挙に直面した「民進党」は、2.28事件に遡及する独裁政治への反撥、すなわち「振り子仮説」と「台独・正名」のアイデンティティ政治によるポピュリスティックな動員力を信じていたと思われる。しかし「三通」を含む対中政策や経済格差の拡大への不満、さらに「民進党」内の不協和音と「ファースト・ファミリー」の腐敗という事実は、3月20日の運命の審判として馬英九候補58.45%、謝長廷候補41.55%の得票率、その得票差221万票という驚異的結果をもたらすことになった。
謝候補によって「国共合作」と非難された馬候補の「台中共同市場」と「愛台」の「6・3・3政策」は、“trouble maker”としての陳総統の「台独・正名」に対抗する「不統・不独・不武」の主張と相まって、“peace maker”の総統としての評価を米国務省筋から引き出している。しかし懸案の「三通」の実現は、低迷する台湾経済にとって確かに朗報であるが、「特殊な国」を主張した台湾にとって「第二の開国」として「香港化」の圧力をもたらす要因とならざるを得ない。この舵取りを巧妙に行うために、馬総統は、「国民党」内部の「保守親中派」と「台湾主流派」の党内バランスを巧みにクリアーする路線調整を行なわなければならない。そしてこの強固な党内基盤を前提に馬総統が達成すべき政治課題は、台湾人アイデンティティを持ち、現状維持を志向する約80%の台湾人のために、希望ある未来社会を創造することであり、さらに国際社会において「台湾共和国」の正当な承認を獲得することにあると云えるのではなかろうか。
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