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2008-05-27 00:00
(連載)防衛省改革:石破文書を読む(2)
佐島直子
専修大学教授
本文によれば、(1)の「キーワード」は、「(自衛隊を)(政治が)活用して国家国民の安全を確保し、国益を実現する」という「積極的文民統制」への転換を目指すということで、防衛省、自衛隊をより眼に見える形で「政治家(国民の代表)」が運用するということのようである。民意を反映した能動的文民統制の強化とでもいうべきか?「文官や制服には任せず、自分がやるのだ」と聞こえなくもない。(2)は、「(既存の組織にとらわれず)防衛省・自衛隊全体としての最適化を図ることによって、国家国民に最高のサービスを提供できる体制」を目指せ、ということらしい。防衛省も社会に開かれたサービス業で、費用対効果やコンプライアンスが重要だというのなら、中々おもしろい発想だが、本文にそこまでつっこんだ表現はない。
(3)の「距離と時間の極限」というのも「現場部隊と中央組織の(間に結節が多く)認識のギャップ(や情報伝達に時間がかかること)」を解消する、ということのようだから、「距離と時間を短縮する」が正しい。(4)も「人的資源の最適再配分」の意らしい。組織改革をすれば、人的資源の再配分は当たり前であって、言わずもがなの感もある。(5)は、ちょっと複雑で、なぜ、責任転嫁の排除と人材育成がワンセットなのか、「キーワード」だけではよくわからないが、本文によれば、「人材育成上の観点からも、内幕が一体化した組織構造、UC一体となった業務遂行が極めて重要」ということらしい。「内幕(内局と各幕僚監部)の人事一体化」の必要性を説いているのだろう。(3)(4)の「キーワード」と重複している感もある。
この種の文書は、なにより会議参加者の心を「つかむ」ことが重要だ。「キーワード」と冠するなら、もう少し工夫があっても良かったように思う。「誰にでも分かる普遍の意味」を持っているか、あるいは、「ん?何のことだろう。どういう意味だろう?何の比喩だろう?」と本文に引き込まれるような言葉がほしかった。会議参加者ばかりでなく、メディアや世論を味方につけるような「キーワード」がより望ましいことは言うまでもない。
石破大臣は、防衛省が抱える様々な問題の根源を「制度(システム)」そのものと捉えているのか、「組織固有」のしがらみや悪習と考えているのか、それともそれらを動かしてきた「ヒト」の資質や教育だといっているのか、それら全てだというなら、解決の糸口、優先順位をその根拠とともに明確に示してほしい。防衛省改革には、石破大臣の辣腕を期待したいが、おっしゃることがいつも独り言のようで、なんとなく分かり難いのが難である。(おわり)
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