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2008-05-09 00:00
日中首脳会談はミャンマーのサイクロン被災支援を取り上げよ
福嶋 輝彦
桜美林大学教授
5月7日福田康夫首相と胡錦濤首席との間で、日中首脳会談が行われた。本サイトでも指摘されているように、「戦略的互恵関係」が再確認された点を評価する向きもあるが、一方ではほとんど見るべき成果はなかったという厳しい見方も出てきている。そこで、せっかくの首脳会談、対中外交で何か日本がポイントを稼ぐ余地はなかったかと考えていると、同時にミャンマーを襲ったサイクロン被害のニュースが陸続と入ってきた。ブッシュ大統領が国際的な支援受け入れを呼びかけるだけでなく、ローラ夫人までがテレビ・カメラの前でしきりに人道支援を訴えかけ、タイ国境で多くのNGO関係者が入国を待機している姿も画面に流れてきた。
そこで、日中首脳会談に思いを寄せると、ふと奇妙なことに気がついた。日本は影が薄くなっているとはいえ、未だ世界第2位の経済大国であるし、中国といえば様々な異論はあるものの、飛ぶ鳥を落とす勢いのアジアに冠たる大国である。この2国の首脳会談でありながら、メディアの報道による限りでは、会談での議題はチベットと人権・ガス田・毒入りギョーザ事件などに集中した模様で、ミャンマーのサイクロン被害への国際救援活動が話題に上った形跡は見当たらない。しかし、日本は独自の立場からミャンマーへのODAを継続してきたし、中国も近年ヤンゴンの軍事政権への影響力を急速に高めている。この両国が一緒になって訴えかければ、ヤンゴンにとって最大の「外圧」となることは間違いあるまい。
北京オリンピックという一大イベントを控えて、チベット問題で国際的圧力を受けている中国としては、これ以上の厄介事は避けたいだろうから、ミャンマーのサイクロン被災には触れてほしくないのが本音であろう。国連安保理でも中国は、ミャンマー政府の対応に懸念を表明する決議を一蹴したと報じられている。しかし、災害の度合いは2004年のインド洋大津波以来の規模に拡大しようとしている以上、中国政府としてもこの問題を直視しないわけにはいくまい。実際5月8日には、中国も国際支援についてミャンマー政府にその頑なな対応を改めるよう求めた、との報道もされている。さらに、欧米諸国だけでなく、ASEAN諸国も事態を憂慮しており、緊急支援の用意を表明している。一方、日本としては災害支援にも慣れてきたし、ODAが近年凋落傾向とはいえ、供出しようと思えばかなりの額を出せるはずである。
であれば、せっかくの日中首脳会談の場を利用しない手はなかった。福田首相が胡主席に「人権はさておき、災害の度合いが酷いようなので、同じアジアの責任ある一員同士として一緒に救援しませんか」と声をかければ済む。日本としては欧米諸国に「今中国と一緒にミャンマーに支援受け入れを働きかけているから、しばらく待ってほしい」と伝えておきますから、中国は「支援を受け入れるように」とヤンゴンを説得してくれませんか、と話を向ける。もしミャンマーが難色を示してきたら、日中両国は「一日も早いサイクロン災害復旧を望む」といった一節だけでも文書化して残せればよしとしよう。あるNGO関係者の曰く「ぎくしゃくした関係の2人の仲を少しでも埋めるには、何か作業を一緒にやってもらうのが一番」とのこと。日中首脳会談と重なったミャンマーのサイクロン被災は、絶好の機会だと思うのだが。
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