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2008-05-09 00:00
ぎこちない日中関係の構造要因
伊奈久喜
新聞記者
胡錦濤主席の訪日による日中首脳会談は、驚きのない結果に終わった。立場によって様々な論評が可能だろう。ガス田、毒ギョウザなど当面の懸案に注目すれば、大きな進展は無かった。一方、いわゆる第四の文書が、中長期の日中関係を考えた時には意味を持ってくる、と肯定的に評価する立場もある。日中首脳会談の歴史を見ると、今回のそれをとりまく状況はかなりユニークだった。これまでの多くの日中会談は、言葉に適切さを欠くかもしれないが、日本側に「弱み」があった。しかし今回は逆だった。北京五輪をいわば人質にとられた中国側は、チベット、スーダン、ビルマ(とあえて書く)を巡って防御的にならざるを得ない状況だった。二国間のガス田、ギョウザも日本側には譲歩する必然性が無かったとすれば、五輪を控えた側の立場が弱い。
日本は「貸し」を作ろうと思ったのか、胡錦濤の人間的側面を売り込もうとした中国に協力した。考えてみれば、今は失敗だったと総括される98年の江沢民訪日でも、江沢民前主席は地方旅行で「こんにちは」「こんばんは」などと日本語を使い、愛嬌を振りまいた。田中均氏が「テレビ朝日」の日中討論で語ったように、日中関係の「安定」は国際社会のみんなの期待である。しかし日中の「蜜月」は、誰が望むだろうか。ASEANも米国も欧州も豪州も望まない。それが中国による日本飲み込みか、日本による中国飲み込みかのいずれかの結果にならない保証はない。両方ともに期待されないシナリオであり、「安定」はいいが、「蜜月」は困るし、あり得ないとなる。
靖国問題が激しい議論を呼んでいた頃、(1)地理的に近接する、(2)共通の敵がない、(3)経済的相互依存が深い、このような二国間関係で良好な関係は歴史上あったか、日本のみならず、米国や中国の有識者などにも聞いてみた。納得のいく答えはなかった。米英は、地理的に離れているから(1)には該当しない。独仏、英仏の和解は冷戦時代だったから、(2)ではないだろう。現在の独仏、英仏関係は(1)(2)(3)を満たすかもしれないが、それらは日中関係のような物理的規模の違いはない。日中関係が安定程度であれ、改善の方向に向かっているとすれば、それは世界の中でも、あるいは歴史をさかのぼっても、ユニークなのだろうが、それすら簡単ではない。
かつて米国務省で仕事をしていたボブ・マニングは「China is not good guy. China is not bad guy. China is big guy.(中国は良い奴でも、悪い奴でもない。でかい奴だ)」と語った。規模の差は日中関係の構造問題として残る。それゆえに頻繁な首脳会談が必要となる。今年は日中首脳会談が多い点でも珍しい。洞爺湖サミット(7月)、北京五輪開会式(8月)、ASEM(アジア欧州首脳会談、9月)、APEC(アジア太平洋経済協力会議、11月)、EAS(東アジア首脳会議、11月)、日中韓首脳会議(12月)などがあり、あと6回の日中首脳会談がありうる。これだけ会談しても、年末までに、ガス田もギョウザも解決できなければ、日中関係は靖国でもめた時よりも深刻になる。シンボルではなく、実質問題の対立になるからだ。無論、チベット、スーダン、ビルマなど実質でもあり、シンボルでもある問題も残る。
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