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2008-03-19 00:00
期待される国際捕鯨委員会の新しい動き
大河原良雄
グローバル・フォーラム代表世話人
ロンドンで開催の国際捕鯨委員会(IWC)の「将来に関する中間会合」は3月8日、南極海で調査活動に従事していた日本の調査捕鯨船日新丸に薬入りの瓶を投入する危険な行為を犯した米環境保護団体シー・シェパードを非難する声明を発して閉幕したと報じられた。この声明は「人命と財産に危険を及ぼすすべての活動は受け入れられない」として、危険な活動の中止を求めている。これまでもグリーンピースの如き環境保護団体が過激な捕鯨反対運動を行ってきたケースはあったものの、IWCが直接上記の様な特定団体の名前を挙げて非難を行ったのは初めてであるという。
上記中間会合では、一部の捕鯨反対国から日本に沿岸での商業捕鯨再開を認める代わりに、南極海で行われている科学調査の為の捕鯨の中止を求める妥協案が提出され、捕鯨支持国と英、蘭等の捕鯨反対国との間で非公式に協議されたという。IWCは1982年に商業捕鯨停止を決議したが、日本はIWCの決定に基づき1987年から南極海で科学的調査捕鯨を実施している。日本の調査活動の結果によると、鯨類の頭数の回復にはみるべきものがあり、鯨種によっては繁殖増加によって魚の棲息数の減少という思わぬ影響への懸念が表明される状況になっている。
然しこれまでのところ、捕鯨反対国は科学調査の為の捕鯨そのものに否定的であったのが、今回の中間会合では、日本沿岸での商業捕鯨を認める代わりに南極海での調査捕鯨を中止するよう求める妥協案が非公式にとり上げられた由であり、5月乃至6月にチリで開催の年次総会でも提案される見通しである旨報じられている。沿岸捕鯨については、歴史的な背景を持つ漁法として日本が長年に亘って主張して来た経緯がある。アラスカの沿岸でエスキモーに対し、IWCによって伝統的な捕鯨が認められている例もあり、今後の展開が注目されるところである。
私は、1980年代初めにワシントンの大使館に勤務した時、全米各地を訪れて講演を行った。米国人は講演会で講師のスピーチの後の質疑応答の際に、発言を求めるのが大好きである。そうした講演会の際に面食らったのは、必ずといってよい程、聴衆の中から立ち上がって捕鯨反対の演説を展開する人物が居た事である。更に驚いたのは、モンタナとか西ヴァージニアの如き海なし州においてすら、捕鯨反対の議論に見舞われた事であった。学校あたりで、鯨は利巧な可愛い動物であると教え込まれたのであろうか、捕鯨の如き残忍な行為は許し得ないという主張であった。IWCという国際機関によって認められた科学的な調査の為の捕鯨である旨を反論しても、到底耳に入るような状況でないままであったのを想起する。1853年米国のペルリ艦隊の「黒船来航」は、米国の捕鯨船への薪炭・給水の基地を求めての開国要求であった事にみられる様に、嘗て大捕鯨国であった米国がその後捕鯨反対に180度の大転換を行った事は忘れ去られているのであろうか。
近年、グリーンピースやシー・シェパードの如き自然環境保護を呼号する団体が捕鯨反対の実力行動に出る事例が跡を絶たないのは遺憾な事である。前述の如きIWCにおける妥協案の模索がみられるようになった事は興味深い事である。こうした新しい機運に乗って、IWCにおいて科学的根拠に立つ現実的な対応策が、捕鯨反対国も納得する形で生み出される事を期待したい。
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